育休で感じた危機感が仕事への意識を変えた
「仕事の半分が建機のテストでしたね。でも、設計の部署に一人でポツンといるのに比べれば、先輩や同僚と打ち解けやすい環境だったと思います。実験課は『この評価はこの人の腕一本にかかっている』という世界。会議室に水着のお姉さんのカレンダーが、どんっと飾ってあるような職場でしたが、職人気質の人が多く家庭的な雰囲気でした。それが私には合っていたのでしょう」
ただ、その頃のエンジニアとしての自分を振り返ると、「仕事に対して明確な目標や高い意識はまだ持っていなかった」とも言う。
エンジンの整備・調整を担当し、先輩社員と試験データを取る日々。仕事を淡々とこなすことには面白みを感じたが、分析結果や研究開発を深く追求し、自ら発信するほどの積極性はなかった。
そんな石田さんの意識が変化したのは、社内結婚を経て、入社7年目に最初の出産・育児を経験してからのことだ。
「当時の上司が、女性が働き続けられる環境をつくることにとても熱心な人だったんです。私も流れに任せて育児休暇の手続きをしましたが、『辞めるという選択肢』を示されていたら、全く違う結果になっていたかもしれません」
彼女はそれからの約10年間で、3人の子の母親になった。育休のたびに、「働き続けられるかどうか」を自らに問いかけてきた。
「育児に追われていると、『このまま仕事ができなくなるのでは』とふと思う瞬間がありました。でも私の場合、そう思ったときに、自分の中で仕事に対するスイッチが入った気がします。仕事を続けたいと心から考えている自分を再発見して、それならもっと一生懸命やらなきゃダメだ、という気持ちが芽生えてきたんです」
数年前、内永ゆか子氏が代表を務めるNPO「J-Win」の講演会に参加した。その際に聞いた言葉が、今も胸に残っている。
「『乗った馬から降りるな』。女性のキャリアには、どうしても手綱を緩めなければならない時期もあります。でも、そんなときはゆっくり走ってもいい。走れるときに加速すればいいんだ、と。子育てをしながら働く私にとっては、とても励まされる言葉でした」