女性エンジニアの先駆者として

現在の勤務地である明石に異動したのは5年前。事業所の生産工場と隣接する油圧ショベル開発センターは、同社のもっとも重要な研究開発拠点の一つである。世界各国のエンジニアが働き、外国人の比率も高い。

「キャタピラーの油圧ショベル開発は、明石が世界の司令塔です。ここで設計されたショベルは世界9カ所の工場で生産されるんです。相模原にいたときから、憧れの職場でした」

その開発センターでエンジンなどの設計に携わった彼女は現在、技術管理部で働いている。

そこで始めたのが、女性社員のネットワークづくりだ。同じ事業所内の女性社員に声をかけ、月に1度の定例会や勉強会、他の事業所や社外のネットワークとの交流の母体にした。最近では夏休みに地元の子どもたちを呼んでショベルの工作をしたり、女子高生向けにエンジニアという仕事の魅力を伝えるイベントも開いている。

女性総合職の採用が始まって25年が経つが、いまも女性エンジニアの割合は非常に少ない。長く同社で働いてきたエンジニアとして、その現状を変えていきたいという思いが彼女にはある。

「仕事を続けるうえで大切なのは、自分が活躍できる分野を見つけ、目標を持ち、結果を出すこと。当たり前のことだけれど、やっぱりそう思います。この会社には、女性社員・エンジニアの数が少ないという課題があります。自分にできることをコツコツとしていきたい。自分のキャリアについても、開発の中心的な仕事に挑戦したいと思っています」

撮影=石川奈都子