「立ち上げ当初は、何もなかったんです」と笑うのは、執行役員で労務や財務を管理する掛川紗矢香さん。

「できたばかりのベンチャーというと、若いメンバーが24時間働いているようなイメージを持つ方も少なくありませんが、メルカリは経験豊富なプロフェッショナルが集まって立ち上げた組織。だからこそ、社員が能力を発揮し、WLBを大切にしながら働けるしくみを自由につくることができています」

チャットツール「Slack」内にある「パパママチャンネル」。育児中のパパを中心に、業務とは離れた、育児ハック、子育ての悩みなどが、オープンに会話されている。

バックオフィス全体でも、非効率な手続きは極力廃止し、社員が能力を活かして活躍できるしくみづくりに奔走。メルシーボックスのほとんどは、掛川さんのチームを中心にまとめられた。

「日々の無駄な会議を省く代わりに、定期的に部署で合宿を行い、日常の業務から離れて、さまざまなテーマで議論して、事業に反映させる場も設けています」

ダイバーシティの取り組みは、企業の生産性を圧倒的に高める。だからこそ、多くの企業がそこに向かって一歩を踏み出しているが、同社ではバリューを掲げたうえで必要なしくみを生み出していったからこそ、理想的な環境が整ったといえる。

社員の平均年齢が30歳前後という中、小泉さんや掛川さんの目は育児や家族の介護などを迎える社員へのサポートなどに向けられている。こういったトップの動きを見ながら、若い社員の意識もおのずと変化していく。アプリの企画やマーケティングに携わる松本このみさんは、以前の会社では裁量が大きかったものの残業も非常に多く倒れる寸前になったことも。

「メルカリでは、残業している人は少ないし、会議も最小限。マネージャーも効率よく仕事をして定時を過ぎると皆帰っていく。最初は驚きましたが、短い時間で生産性を上げることが大切なのだと実感しました」