一緒にご飯を食べたい気持ちに気づかなくて

入社して最初に配属されたのは技術系の職場。変電所の建設や、新築ビルの電気供給ルートを検討する部署だ。

「電気の世界はオームの法則くらいしか知らなくて、今思えば恥ずかしい初歩的なことを先輩に聞いて、困らせていました」

びっくりしたのは、まだ迷信が生きていたこと。

「地中に送電線を引く工事現場を見せてほしいと先輩に頼んだら、『ごめんな。土の神様は女性だから現場に女性を連れていくと焼きもちを焼いて事故が起きるって、請負の人が嫌がるんだよ』と断られました」

ロクシタンのハンドクリームは季節に応じてさまざまな種類を使いわけ。またチョコレート好きを公言しているため、同僚からお土産にもらうことも。

そんな時代だから技術系の職場は基本、男性ばかり。ただし、庶務には女性の先輩たちがいた。年は佐藤さんと同じくらい。ランチでちょっと失敗してしまう。

「庶務以外に初めて女性が来るというので、すごく期待し、かわいがってくださろうとしたんです」

佐藤さんが男性社員と会議に入って昼休みに食い込んでも待っていてくれた。佐藤さんは、それは申し訳ないと思い「先に食べてください」と頼んだ。それが何回か続いた後のことだ。「せっかく私たちが待っているのに」ときつく言われた。

男性職場の中に、中高生にありがちな、「どこに行くのも一緒」というような文化が育まれていた。佐藤さんは「女性の人間関係って難しいな」と感じた。