研修シーズン、土日はほぼつぶれ……

1999年夏、営業部門に異動する。

「技術系で仕事をしていくうちに、お客さまと向き合う仕事のほうが合っているかなと思い始めました。相手が喜ぶことを考え、それをかなえるのが好きでしたから」

(上)1990~1999年(中、下)2006年~2011年

営業部門に移った佐藤さんはセールスそのものよりは管理職のマネジメント力向上の仕事に携わるようになる。2000年から電力小売りの自由化が段階的にはじまり、経営層は、競争を勝ち抜くため、マネジャーが現場の力をうまく引き出すことが不可欠だと考えた。その期待を背負う仕事だ。

佐藤さんはその後、営業部門に加え、業務マネジメントの改革にも関与し、06年からはあらゆる階層でイノベーションを生み出すための研修を担当するようになる。なかには部長や執行役員相手のものもあった。

「そのクラスだと土日しか研修できません。マネジャーは私一人、メンバー4人の小さなグループで大きな研修をいくつも回しました。私はすべてを見なくてはいけなかったので、研修シーズンの7月中旬から2月の終わりまで土日はほぼつぶれましたね」

平日はほかの研修が入るし、土日の研修のフォローや次の研修に向けた講師との打ち合わせなど、仕事は次々と押し寄せてくる。

「仕事はおもしろいし、やりがいもありましたが、自分の時間が持てなかったのは辛かったですね」

その時期を切り抜けられたのは、心の底に入社時の思いがあったからかもしれない。「自分たちが頑張れば世の中の役に立てる」

だが、すべてがひっくり返る。東日本大震災のときの原発事故だ。