過剰なテクニックを制限する
【澤田】ところで、若新さんはスポーツはされますか。
【若新】僕は団体競技が苦手で、もっぱら個人競技派です。中学ではザ・部活という感じでバレー部に入りましたが、集団で声を出すのと球拾いが嫌で、すぐに辞めてしまいました(笑)。唯一まともに取り組んだのは、高校から大学まで続けた空手くらいです。完全に個人プレーなので、自分のことだけ考えればいい(笑)。その他も、小学生の頃は卓球が得意で、地元の大会で上位入賞したこともありますし、高校の時にテニスもちょっとやりましたが、いずれも個人競技ですね。
【澤田】ちょうど今、ある公的機関さんと「ブラックホール卓球」というスポーツをつくっています。真ん中をくり抜いたラケットで球を打つのですが、上手な人ほど真ん中で打つ癖があるので、あまり卓球をやったことのない人のほうが有利になったりするんです。
【若新】それなら僕でもオリンピック選手に勝てるかもしれないですね。競技スポーツの場合、“ゆるく”やろうと思っても、すごく上手な人が相手だったり、勝負に夢中になったりすると、どうしてもゆるくならない。下手な人は自然と勝負ごとから排除されますよね。排他的にならない「ゆるスポーツ」であるためには、ゆるくならざるを得ないような制限を設けておくことが必要ですね。
【澤田】そうなんです。僕らは「ゆるスポーツ」を、障害者スポーツではなく、スポーツに障害を設ける「障害スポーツ」と捉えています。ただし、見るからに障害と分かるとつまらないし、誰もやりたがらないので、ポップな障害を設けるようにしています。
たとえば、「ベビーバスケ」という人気種目がありますが、これはボールを激しく扱うとボールが赤ちゃんみたいに「オギャー」と泣く、特殊なボールでプレーします。ボールが泣くと相手ボールになるので、味方同士でパスするときも、そっとパスしないといけない。かといってボールの手渡しは禁止で、必ずボールを放るのがルールです。面白いのは、バスケ選手と一緒にプレーすると、彼らはいつもの癖でプレー中にフェイントをかけたりするんです。赤ちゃん(ボール)にとっては、寝ていたところを叩き起こされたようなもので、すぐに「オギャー」です(笑)。
【若新】特殊なボールを開発することで、過剰なテクニックを制限するわけですね。バスケの上手い人もそうでない人も、適度に肩を並べて勝負を楽しめる。バスケの一流選手を集めたチームと、市民チームで戦えると面白おもしろそうですね。