実は以前も、ファミマは自前で薬剤師を雇い、薬を販売する方法を実験店で試したことがあった。だが、薬剤師や登録販売者の確保などが難しく、全国展開は不可能と断念した。その後、既存のドラッグストアとの提携の道を探り、本多氏自ら全国津々浦々を訪ね歩き、1社ごと地道に口説いていった。12年ヒグチ薬局との提携を皮切りに、現在全国で約40店舗展開しており、19年2月期までに1000店出店を目標にしている。その1号店である、神田淡路町店に薬ヒグチ&ファーマライズの渡邊哲夫取締役を訪ねた。

「実は私たちもかつて自前でコンビニ的な商材を置く試みをしたんです。でも全然うまくいかなかった。売れる商品、システムづくり、鮮度管理など、コンビニさんは一歩も二歩も先をいっていました」

だが、提携後もオープンまでの道のりは遠く、試行錯誤の連続で、「ケンカ」も絶えなかったと渡邊氏は当時を振り返って笑う。

「もう、コンビニとドラッグストアではカルチャーが違うんですよね。我々は少しでも長くお客様に店内にいてもらうために、売り場を工夫します。平均して15分くらいはいてほしい。でもコンビニさんは、さっさと店内を見て買い物を済ませるお客様を想定している。我々は関連商品をたくさん置きたいけど、コンビニではいわゆる死に筋商品は徹底して排除します。ドラッグストアの特徴の一つ、手書きポップも、付ける、付けないで相当揉めましたね。結局最後は、手書きのポップは譲ってくれましたけど(笑)。でも、お互い仕事に情熱を持っているからこそ熱くなるわけで、一緒に店舗をつくるのはとても楽しかったですよ」

ドラッグストアの客層は約6割が女性であり、コンビニは約6割が男性である。両者が一体化することで、それまでコンビニやドラッグストアを敬遠していた層も利用するようになった。来客数は3倍になり、売り上げはおよそ2倍になったという。周囲のコンビニを閉店に追いやる「コンビニキラー」に成長した店舗も少なくない。今後は調剤も予定していると語る渡邊氏は「ドラッグストア+コンビニは、最強の業態」と強調する。

(左)東京・神田淡路町にあるファミマと薬ヒグチの合体店舗。周囲からコンビニが姿を消した。
(右)薬ヒグチ&ファーマライズ取締役 渡邊哲夫氏

「調剤を待ちながらイートインコーナーで昼食をとれるんです。商店、銀行、市役所、コーヒーショップ、ドーナツショップ、書店、そのすべてがここにあるって、すごいことですよ」