上司が「ワーキングマザー」を3日間体験
育ボスブートキャンプにいたっては、いわばワーキングマザーの体験をマネジャーにしてもらうという内容で、多くの企業が取り組んでいる「女性やワーキングマザーを支援する」のとは真逆の発想に立っている。
このプログラムを同僚とともに提案・実現したのは、育休からの復帰後、自身がジレンマに苦しんでいた浅田優子だった。浅田自身、「期待されればうれしいし応えたい。ちゃんと結果を出したい。でも17時半に帰って、仕事結果を出し続けるということは想像以上に大変だった」。
当初、浅田は上司たちと話がかみ合わないと感じていた。「前提として見えている世界が違いました。17時半に帰る生活を知らない人に本当の意味での大変さや自分が抱える葛藤をわかってもらえないのは当然かもしれないと思った」
リクルートグループの中でもワーキングマザーが多いRMP。「制約」が制約になれば会社としても伸びしろがなくなっていく。どうしたらどんな人も活躍できる会社・社会を作れるか――。浅田は「マネジャーたちにワーキングマザーの大変さをわかってほしいというよりは、この状況を1回体験してみて一緒に考えませんかという気持ち」で、「マネジャーに育児と仕事の両立体験をしてもらうプログラム」を提案したわけだ。
「共働きで育児」も多様なライフのひとつの形態でしかない。プログラムの狙いは、それを通じて様々な人へのバックグラウンドやライフを想像する、あるいは自分には見えていなかったということを認識することだった。
実際に参加したマネジャーからは「メンバーへの想像力が働くようになり、マネジメント能力が上がった」「自分自身も必要ない会議への出席はやめ、早く帰るようになった」との声が上がる。
次回原稿では、よくも悪くも“体育会系”だったリクルートが「女性活躍」に加え、男性を含めた働き方改革をどのように導入し、その際、いかなる障害があり、どう乗り越えていったのかをレポートしていこう。