全員在宅勤務、男性育休義務化で男性社員が覚醒

バリバリやる人ほど辞めやすく、残るには意欲を冷却せざるえない――。そんなワーキングマザーたちの葛藤やジレンマを描いた拙著『「育休世代」のジレンマ』に対し、「共感しました」という感想を寄せてくれた女性は多い。その人数を会社別に数えたら、間違いなくリクルートグループが1番多かった。それくらい、リクルート内にも「ジレンマ」が溜まっていた。

焦点は「女性」から働き方改革へ

ところが、最近になって、そのリクルートのワーキングマザーたちが笑顔になってきた。

背景にあるのは、リクルートHD傘下の各社が競うようにして導入しているワークスタイルの変革だった。例えば、ホールディングスなど数社で導入する「全員リモートワーク(在宅勤務)」や、リクルートコミュニケーションズが打ち出し話題になった「男性育休義務化」だ。

リクルートマーケティングパートナーズ(RMP)は衝撃的なプログラム“育ボスブートキャンプ”を導入した。これは、「共働きで育児中の社員の家にマネジャーが平日の3日連続で訪問し、普段親がしている育児・家事を親に代わってやってみる」というかなり先進的な取り組みだ。

こうした施策はワーキングマザーを対象としたものではない。それなのに、なぜワーキングマザーたちのウケがいいのか。

リクルートグループでは、以前からリモートワークを利用しているワーキングマザーたちはいた。でも、自分たちだけが特例で、「申し訳ない」という気持ちや居心地の悪さを感じていた。後ろめたい気持ちを引きずっていたのだ。

それが、女性や育児中社員だけではない、男性を含めた全社員向けの施策となった瞬間、むしろ彼女たちは最先端の存在となり、イキイキとし始めた。社内で堂々としていられる感覚ができたのだ。

男性育休もしかり。育児する男性への風当たりが強い職場は、育児中の女性を特例的にみなして戦力としてはあまり期待していないという面がある。しかし、男女問わず利用できる施策が増えることが男性社員の経験を豊かにし、制約を抱える多様な社員が力を発揮できる環境づくりにつながったのだ。