航空業界は高給のはずが……

就職先を選ぶ際には、仕事内容や会社の将来性のみならず、給料も選択基準の一つとなります。パイロットとCAは人気の高い職業ですが、どれほどの給料がもらえるのでしょうか。

結論から言えば、約10年前はパイロットとして20年ほど勤務すれば40代前半で2000万円の年収が得られました。これには出張手当などが含まれていますが、世間一般と比べればかなりの高給です。パイロット人気もうなずけます。そしてCAの場合は、10年以上勤務すれば年収が600万円を超えるとされていました。

しかし近頃は格安航空会社(LCC)の台頭もあり、ANAとJALの2社による業界占有率は依然として高いものの、競争の激化や景気変動により昔ほどの高給が期待できなくなりました。

近年のANAとJALの職柄別平均給与を2005年3月期のものと比較すると、いずれも下がっています。

 
ANAとJAL 平均年間給与の推移。ANAの平均年間給与については、2013年4月1日の持ち株会社への移行を受けて一般従業員のみの開示となったため、2013年3月期のデータを使用した。

2005年には2社とも運航乗務員(パイロット)の平均年間給与が2000万円前後ありましたが、ANAに関しては、パイロットの平均勤務年数が20.8年から2013年には21.9年と1年延びたにも関わらず給料が143万円下がり、JALに至っては2005年と2015年では平均勤続年数が変わらないのに、平均年間給与が341万円も下がりました。両社ともパイロットのみならず、客室乗務員(CA)や地上社員の給料も減少していますが、落ち幅は金額で見ても比率で見ても、JALの方が大きくなっています。

ただ、給料というものは会社の業績次第で変わるものです。業績が良くなればまた上がりますし、悪ければさらに下がります。2016年3月期は円安による外国人旅行者の増加もありANAとJALがともに最高益を更新しました。今後はオリンピックに伴う旅行外国人旅行者の増加や旅行需要が十分に増えることが考えられ、両社の給料がまた以前の水準に近づくことも期待できます。

次回はJALが経営破綻からたった2年でいかにして復活したかについて、分析していきたいと思います。

秦 美佐子(はた・みさこ)
公認会計士
早稲田大学政治経済学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、優成監査法人勤務を経て独立。在職中に製造業、サービス業、小売業、不動産業など、さまざまな業種の会社の監査に従事する。上場準備企業や倒産企業の監査を通して、飛び交う情報に翻弄されずに会社の実力を見極めるためには有価証券報告書の読解が必要不可欠だと感じ、独立後に『「本当にいい会社」が一目でわかる有価証券報告書の読み方』(プレジデント社)を執筆。現在は会計コンサルのかたわら講演や執筆も行っている。他の著書に『ディズニー魔法の会計』(中経出版)などがある。