女性管理職率、アジア5カ国最下位の日本

世の中の半分が女性であるのに対し、労働市場における女性は50%ではない。この問題は“性別による多様性”を意味する「ジェンダーダイバーシティ」という言葉で表現されるが、ライト氏によるとこのジェンダーダイバーシティは日本では特に深刻な課題だという。

「海外でも課題として取り上げられていますが、日本は取締役、管理職、社員と全てのレベルにおいて女性が少ない」とライト氏は指摘する。前ページで触れたとおり、日本の女性管理職は19%と5カ国中最低なのだ。2年前から昨年までは15%から一気に4ポイントアップして19%になったが、この1年は横ばいで変化はなかったのだという。

顕著に男女差が出た「均等賃金」「均等機会」

「ジェンダーダイバーシティのバランスは、雇用主が女性をどうみるかという企業側の姿勢や考え方、そして雇用される個人の2つの要因があります」とライト氏。後者の個人という点で、ヘイズの女性活躍推進に関する調査から、日本女性の働き方への意識が分かるデータがある。

【均等賃金】では「平等と思わない」と答えた男女の割合に10%の差が出る結果に。【均等機会】ではさらに「平等と思わない」の男女割合に16%と大きな開きが出た。また男性は年齢が上がるほど「不平等」と感じるポイントが減るという統計も。これは女性のキャリアを阻む「ガラスの天井」の存在を示唆するとも考えられる。

「性別に関わらず平等な給与・報酬が与えられているか」として均等賃金に対する意識を聞いたところ、男女の平均で67%が「平等だと思う」と回答、これは世界(日本、中国、オーストラリア、英国、フランス、ロシア)の平均である64%と僅差となった。

「平等な機会」については、62%が「性別に関係なくキャリアアップや昇進の機会を与えられている」と回答。これも世界平均の61%とほぼ同じという結果だ。ヘイズではこの2つを、予想していたよりも良い結果と見ている。

だが、回答者の内訳をみると、勤務先が外資系か日系か、男性か女性か、年齢など属性の違いによりばらつきがある。賃金については外資系企業の従業員の74%が「平等」を選んだのに対し、日系企業では63%に。機会については、「平等」を選択した女性は51%、男性は67%と16ポイントも差がある。さらに、結婚、出産、育児など女性のライフスタイルが大きく変化する年齢層である26歳~40歳の女性のみピックアップすると、63%が「平等ではない」と感じていることが分かった。

社内環境への意識、日本女性の関心は低い?

ヘイズが大きな問題だと見ているのは、企業側の取り組みに対する、雇用されている女性の関心の低さだ。「自分が勤める企業にジェンダーダイバーシティに関する方針や実行規範が正式に存在するかどうか」について、3割が「分からない」と回答しているのだ。

過去5年にダイバーシティ問題が改善されたかという質問についても「分からない」が過半数の51%を占め、今後5年での改善の見通しについても「分からない」は39%に――。賃金、機会の平等を意識する前に、土台としての均等への関心の低さがうかがえる。この無関心が、均等賃金均等機会に関する日本女性の統計を、比較的肯定的な傾向にして、それをヘイズが「意外な結果」としたことは否めない。

文化や習慣の違いもある。日本の雇用が「会社に勤める」組織型採用で、新卒一括採用・年功序列が多いのに対し、海外では職務(ジョブ・ディスクリプション)を明記して採用される職務型が主流だ。「日本では、能力や実績が給与・報酬に反映されるべきという意識が海外と比べると希薄なのかもしれない」とヘイズは見ている。