ジェンダーダイバーシティで無視できない
女性のマインドと文化的背景

働くことに対する女性のマインドはどうだろうか? 男女共同参画推進連携会議企画委員会が、過去に国内で行ったアンケートからの課題として、

・男性だけではなく女性自身も含めた社会全般における固定的役割分担意識の見直し
・働き方の見直しを含めたワークライフバランスの実現
・女性がキャリアデザインを行うための環境整備、能力開発のための支援

などを挙げている。女性の労働市場への参画と202030の実現のためには、「家事と育児は女性」という固定的な役割分担意識の変化が女性にも求められている、といえそうだ。

現在中国に在住、その前には日本で長く勤務していたこともあるライト氏に、日本とアジア諸国の働く女性のマインドについて聞くと、にっこりと笑いながら「大きな違いがありますね」と返ってきた。

「中国やマレーシアの女性はアイデンティティーが強く、野心的です。それに対し、日本の女性は控えめです」という。上記のヘイズの調査によると、賃金が均等だと感じている日本の女性は62%であるのに対し、中国の女性は72%。賃金交渉に控えめな日本と、野心的な中国を示しているようにみえる。

ライト氏は文化の違いも指摘する。「日本では約60%が出産で仕事を辞めます。なぜなら、子育ては女性の仕事とみなされているからです。中国では家族全体で子育てをすると考えられています。女性は出産後4カ月で職場に復帰し、祖父母が子育てで大きな役割を担っています」。このように、ジェンダーダイバーシティにはマインド、そして文化的な違いも大きく影響しているようだ。

欧米でも根強いジェンダーギャップ
解決策は「成果型報酬」と「同一賃金」の導入

先行していると思われる欧米でも、FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグ氏の著書『Lean Inが話題となったように、ジェンダーダイバーシティは課題だ。

「歴史的に男性が働き、女性が家に残るという文化がありました。女性が社会に進出して収入を得るようになったとしても、家計のメインの稼ぎ頭はやはり男性、というところが欧米でも多いのです」とライト氏。

ヘイズの調査でも、賃金の平等について聞いたところ、平等ではないという回答は英国女性で57%、フランス女性では55%となり、日本女性よりもポイントが高い。これらの国は女性の管理職の比率が日本よりも高いのに、この結果だ。「変化はなかなか難しいのです」――ライト氏は実感を込めて話す。

これらのギャップを埋める解決策としてヘイズは、「成果型報酬」と「同一賃金の導入」を挙げる。同じ仕事をして、同じように職務が遂行できるのであれば同じ賃金を、成果を出しているならよい賃金を、という考え方に基づけば、給与や昇進の交渉力に長けている男性と、そうではないと評される女性との差を乗り越えることができるからだ。

撮影=森崎純子