提言:処遇に格差があり、階層化を進めてしまうデメリットも

●日本女子大学教授 大沢真知子さんから

正社員には雇用の安定があるが、勤務地、職務の内容、労働時間などは、会社の命令にしたがうことが暗黙のうちに想定されている。他方、非正社員は処遇も低くなり、能力開発の機会もない。

家庭責任をもって働く労働者が増えるにしたがって、その中間の働き方のニーズが高まってきた。そこで提案されたのが限定正社員である。2011年には働く人たちの2割程度がこのような働き方をしているといわれている。

12年には労働契約法が改正され、職場で5年以上働く有期労働契約者が申し込めば、無期へと転換できることや、近年は非正規労働者不足が深刻化していることから、優秀な人材をキープするために、非正規労働者の限定正社員化を進めている会社も増えている。

限定正社員のメリットはいうまでもなく、雇用が安定しているということである。それが働くもののやる気を高める。他方、デメリットもある。それは、処遇格差が依然としてあることだ。それが労働者の階層化を進めてしまうことになる。雇用保障の程度においても正社員ほどではない。

また、女性の活躍が企業にとって不可欠な時代になってきており、無限定正社員の残業時間を削減し、生産性をあげることが求められているにもかかわらず、それを標準的な働き方としながら、限定正社員という例外的な働き方を認めている。これでは問題の本質的な解決にはつながらず、かつ男性の育児参加も進まない。

限定正社員という働き方が標準的である、という認識からスタートするとともに、正社員と非正社員の待遇格差を解消するために、「同一価値労働同一賃金」の原則を確立することが求められているのである。

撮影=的野弘路