男女平等指数ランキング、日本は101位
世界経済フォーラムが毎年発表する各国ジェンダーギャップ指数(The Global Gender Gap Report 2015)で、今年は日本が145カ国中101位になり、昨年の104位から3ポイント上げたと報道された。それを見て微苦笑した人は多かったに違いない。「あれだけ『女性活躍推進』の大旗を振っていたのに、世界的にはそんな評価かぁ」と。
「女性が活躍する社会づくりを政府が掲げているんだって」という認識だけは広がっているが、現実レベルでは遅々として進んでいない。いよいよ先日は「女性登用30%目標を政府が断念」との報道もあり、「社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にするなんて、目標値実現は到底無理。現実的な数値(7%)へ軌道修正」との話に、確かに現実の女性管理職の数を見るとそれが身の丈なんでしょうね、と思う。
「指導的地位」とは、役所や企業では「課長級以上」と定義されるのだそうだ。まさに冒頭の彼女は行政組織の「指導的地位」にいるわけで、その女性割合(国家公務員)は現在3.5%程度なのだそうだから、私は希少な女性課長にお目にかかれたということらしい。
「30%」と数字を割り当てることの意義
先日このPRESIDENT WOMAN Onlineで公開された記事「『ワーク・シフト』リンダ・グラットン教授に聞く、“働き方の未来”」(http://woman.president.jp/articles/-/727)では、ベストセラーとなった『ワーク・シフト』(2012年)の著者で、経営組織論の世界的権威として知られる、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が、女性管理職比率の目標数値を一律30%と定めるような、いわゆる女性登用クォータ制(数字割り当て)の意義について語っている。
「30%という数字は、ひとつの分水嶺になるのをご存知ですか。グループの中で、あるカテゴリーの人が30%を超えると、ステレオタイプに振る舞わなくなります。つまりその割合が30%以下の場合、女性たちは、例えば、とても攻撃的であったり、逆に従順であったりと、ステレオタイプに行動しがちで、リーダーシップを発揮することはありません。しかし、30%を超えると人々は性別について語らなくなり、自由に振る舞うようになります」
30%が分岐嶺という話に、私はハッとした。もともと私はリンダ・グラットン氏の『ワーク・シフト』の大ファンで、特にそれが決して大上段から抽象的・一般的な未来の職業論を語るのでなく、彼女の2人の息子たちの未来を、母親の視点から描き、思いをはせるという切り口で語られ始めるところがたまらなく好きだ。自分の教育講演で大いに引用させてもらい、本を紹介したこともある。その彼女が語る「30%が分岐嶺となって、女性は少数派意識を持たなくなる」との話は、実感を持って浸み込んでいくようだった。マイノリティが「少数派意識」、つまり数としての劣位意識を持たなくなったとき、マイノリティは自分たちへ向けられる視線を意識しなくなり、自意識からも自由になる。「こうあるべき」と自らに課す姿、あるいはステレオタイプに自分の体をねじ込んで適応しようと努力しなくてよくなる。人の視線から自由になれば、自分たちの国籍や宗教やジェンダーについて語らなくなる、語らなくてよくなるのだ。
そしてリンダ・グラットン氏はこうも語る。「日本の組織構造は、まるでクルミの殻のようです。堅く、美しく閉じられていて、開けることはほぼ不可能です」。そして、じつは日本は何をすべきかを「もう、皆知っている」。「若い女性たちの声を聞き、女性役員登用の目標値を設けたり、女性たちがネットワークを形成するのを奨励したり……もう既にスタートし始めている、一連の取り組みを加速させることです。」「とにかく、やるしかないのです。始めるしかないのです」。