『ワーク・シフト』。2013年にビジネス書大賞を受賞した話題作。今後の世界に起こることを丁寧に整理した上で、これからの人々の働き方について、予測に基づくアドバイスを行う。

政府が今回、女性登用クォータを30%から7%へと下げたのは、「諦めたから」ではないと信じたい。現状を十分に認識した上で現実的な路線に軌道修正したのは、着実に前へ進むためなのだと。折しも、新スローガン「一億総活躍社会実現」の登場によって示された社会像に、現代の働く女性たちからは「『産め、働け、育てろ、介護しろ』と、全てを女に押し付け、同時実現せよと命令しているとようにしか聞こえない」との猛反発も起きている。(参考記事:「『仕事・育児を両立』した女性に限って、なぜ、50歳で介護離職するのか?」http://president.jp/articles/-/16821)日本では女性の労働参加率が低かったがゆえに、どこか「女性の労働力」は神話的なレベルで全ての社会問題を解決する魔法の呪文だとでも思われているのではないか。「女性のパワー」は無尽蔵でも、万能でもない。女だって男と同じ、人間である。

冒頭の女性課長が口にした「労働者の生産性向上」は、女性だけに向けられた言葉ではなく、男性も女性も老いも若きも、全ての生産人口に共通の課題なのだということを改めて認識したい。

河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。