業界の常識をやぶる商品開発

自社ブランドのフェイスマスクは「ルルルン」という名前で、その年の7月に発売しました。ネーミングは、みんなで「女性がうれしくなるときの気持ちって、ルルルンって感じだよね」と話し合って決めました。それまでフェイスマスクは高価格なものがほとんどで、デートの前などの特別な日に使うものでしたが、私たちは「毎日が特別」というコンセプトでお客様にアピールしていきました。

毎日使っていただくためには値段も重要です。1袋42枚入りで1500円という価格をつけました。当時、この価格帯のフェイスマスクはありませんでした。

開発に入ったのは震災から1カ月弱のころです。業務用のフェイスマスクを製造していた四国の工場に電話し、お願いに行きました。安かろう悪かろうではいけません。高品質を維持しながらコストを下げる交渉です。私の場合、未来予測が苦手でその場の状況での交渉をしてしまいがちだったのですが、そこは会社の男性社員が「1年後にはここまで売上を持っていきます。2年目は、3年目は」と説得してくれました。

営業担当の彼らからは、「コストの部分の交渉は僕たちが頑張るから、佐藤さんはいいものを作りなさい。自分が毎日使いたくて仕方がないようなものを」と言ってもらいました。

フェイスマスクのサンプルを自分で試して改善していくために、会社ではすっぴんでいることも多かったですね。1日に何十枚も試しました。

あとは世の中にルルルンを広めるだけですが、そこにも困難はありました。

構成=Top communication 撮影=向井渉