金融資産がガラス張りになる可能性も

マイナンバー制度の利用範囲は今後、さらに広がっていくことが考えられます。

この6月初め、マイナンバー法は改正案が成立する目前でした。その内容は、「金融機関の預金口座もマイナンバーの対象とする」というもの。ところが、そこに日本年金機構のデータ漏洩事件が起きて、改正案の成立は当面、先送りになっています。

でも、今回は先送りになったものの、いずれは預金口座もマイナンバーの対象になるように思います。それは、一人ひとりの資産を簡単に把握できるようになれば、行政側にとって、活用範囲は格段に広がるからです。

たとえば相続税の場合。亡くなった人の預金口座が簡単に一覧できたら、「この人は相続税がかかりそう」ということがすぐにわかります。また、収入のない人の預金残高が急に増えていたら、「贈与を受けたのでは?」とチェックできるかもしれません。実は、こうした預金情報については、現在でも税務署は調べることが可能です。でも、マイナンバーを使えれば、効率はずっとアップするはずです。

さらに、資産と社会保障を結びつけることも簡単になります。たとえば、介護保険施設を利用する際、所得が少ない人は負担が軽減されますが、今年からは資産が一定以下であることも条件に加わりました。今は通帳のコピーなどの提出を求めていますが、マイナンバーで資産が把握できれば、調査はもっと容易になるでしょう。

こうした動きは、今後ももっと増えるかもしれません。思いつくままに挙げてみれば、「一定以上の資産がある人には社会保険料をたくさん払ってもらう」「一定以上の資産がある人は年金額を減らす」「一定以上の資産がある人は税金を増やす」などなど。あくまで想像にすぎませんが……。

また、ICチップのついた「個人カード」の利用範囲を広げる動きもあります。たとえば、健康保険証や運転免許証を兼用したり、クレジットカードの機能をつけたり、カードだけで住所変更も可能にして電力・ガス会社と結びつけたりと、民間利用も含めてさまざまな利用法が検討されているようです。