年末調整の季節がきた。もれなく税の還付を受けるには何に気を付けたらいいか。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「年末調整で申請が可能な所得控除は12種類ある。このうち、とくに見落としがちなもの3つに注意が必要だ」という――。
電卓を使用する人の手元
写真=iStock.com/Dacharlie
※写真はイメージです

天引きされている税金は「仮の金額」にすぎない

今年も残すところあと2カ月。会社にお勤めの方は、年末調整の書類を受け取る時期かと思います。本稿では、もれなく税の還付を受けるための注意すべきポイントを3つご紹介します。

そもそもなぜ年末調整は必要なのでしょうか。

企業は、従業員の税や社会保険料を徴収し、本人に代わって納税しています。ご存じのとおり、これらは毎月の給与から天引きされていますよね。

実はこれは「仮の税額」。たとえば、賞与は5カ月分、給与は1年間を通して変動がないものとして、計算されています。しかし、実際には残業時間などで月毎に給与は異なります。ボーナスも会社の業績によって変わるでしょう。

また、仮で天引きした税額には「配偶者控除」や「生命保険料控除」といった控除が反映されていません。

そこで、年末に、実際の給与や賞与、各種の控除を反映させ、本来の税額を算出します。そして、天引きした分との差額を「還付」または「徴収」します。これが年末調整です。

先日行われた自民党総裁選では「年末調整をなくす」という話題が出ていました。

今のところ実現する可能性は低いですが、年末調整を会社側が行わない場合、従業員が給与や経費、控除などを税務署に確定申告し、税や社会保険料を納めることになります。企業側の負担は減る一方で、従業員と税務署の負担が増えるということですね。

年末調整で控除申請が可能な所得控除は12種類

さて、話を戻しますと、年末調整で従業員が行うことは、自分が該当する控除を申請すること。勤め先は、従業員の家族の構成や保険加入の有無といった情報を知り得ませんので、年末調整の書類に記入して提出するのですね(給与や賞与に関する計算は、企業が行います)。

つまり、年末調整で控除を申請し忘れると、本来受け取るべき税の還付を受けられないことになります。申告漏れがないよう、自分が該当する控除をチェックしておきましょう。

年末調整では、15種類ある所得控除のうち12種類を申請することができます。

【図表1】年末調整で受けられる12の控除一覧(給与所得者の場合)
図表=筆者作成