先の丸い靴をはいたら覇気がダウン
周りの人に、尖った靴の知り合いがいないか聞いてみました。
出版社の人によると「編集部では見たことないですね。でも街で見かける人は、小柄な男性が自分を大きく見せようとしてはいているイメージ。だいたい足の長さからして先の部分は無駄だと思うんですが……」と、同性から見ても変なようです。
編集部やテレビ局、広告代理店などマスコミ系では確かに尖っている人は見かけません。テレビ局ではサンダルばきや雪駄などラフなスタイルがスノッブで、広告代理店の男性はハイブランドのスニーカーでこなれ感を出していたりします。
先日、トークイベントに出る機会があったので、客席に向かって、「尖った靴をはいている人はいませんか?」と質問してみたら、反応はゼロ。ロフトプラスワンのお客さん、サブカル好き男子は靴が尖っていないようです。
しかしその時のイベント主催者、AV監督村西とおる氏から貴重な情報をいただきました。
「昔英会話教材のキャッチセールスをしていた時、『英会話の必要性を感じますか?』と声をかけると、ついてきた人はだいたい靴が尖ってました。なので靴が尖っている人を狙ってセールスしていました」
とのこと。ということはつまり、靴が尖っている人は意識高い系だと納得しました。
街で見かけるスーツ姿の集団の足元をチェックすると、靴の尖り具合はだいたい共通していることにも気付きました。同僚同士、競争心が拮抗しているのでしょう。1人だけ尖ったり、丸くなったりして和を乱さないという協調性も感じられました。
また、意識の高さを物語っていたのは、靴先が尖った男性が、ひとり軽いほほえみを浮かべながら歩いていた姿です。先が反った靴をはいていた男性が、一歩ずつ確かな足取りで歩いているのも見かけて、テコの原理のように靴の反りを利用することで、歩行に勢いがつく効果があるように思いました。先に沿ってエネルギーも上向きに流れそうです。視界に入ってくる靴の先の、精神に及ぼす作用は無視できません。
不肖私もポインテッドトゥの尖ったパンプスばかりはいていたのが、久しぶりに先の丸い靴をはいたら、覇気がダウンしたというか、穏やかになってちょっと心もとない気分になりました。尖った靴の時のほうがアドレナリンが分泌されていたような……。
尖って反っている靴は、ともすると自信を失いそうなナイーブな男性に前に進む力を与え、やる気や元気を増幅させるアイテムなのです。街で見かけても、(ダサっ)と斬り捨てず、(がんばってください)と応援の念を送っていきたいです。