孫社長の後継候補は破格の165億円!
従業員の年間給与平均が何と2000万円に迫る、1947万円の企業がある。しかも、従業員の平均年齢は29.9歳だ。オーナーの高齢化にともない後継者問題を抱える中堅・中小企業を主な対象に、M&A(企業の買収・合併)の仲介業務を手がける、M&Aキャピタルパートナーズである。
売上高は16億円強と小粒、それに9月期決算ということもあって話題になることは少ないが、1600万円台のキーエンスを筆頭に高額給与で知られる大手テレビ局や総合商社のそれをはるかり上回り、上場企業では断然のトップだ。
一方、同社が3人の社内取締役に支給した報酬総額は3967万円。1人平均は1322万円である。従業員と取締役の年収が逆転。金融機関を中心に個人レベルでは、取締役を上回る年収を得ている人材は少なくないが、平均年収で取締役が従業員を下回っているのは同社ぐらいのものだろう。
もちろん、同社は例外中の例外。それどころか、役員報酬の高額化が最近の流れ。業績連動型の報酬体系にシフトしていることもあり、業績好調組を中心に取締役の報酬アップが目立つ。事実、15年3月期決算の企業に限っても1億円以上の報酬を得た取締役や執行役は211社の計411人(東京商工リサーチ発表)を数える。決算が3月期以外のキヤノンや中外製薬などを含めれば、その数はさらに膨らむ。
高額報酬の主な顔ぶれを見てみよう。まずは、一時金による高額報酬取締役である。14年度時点では取締役に就任していないことからランクインしていないが、ソフトバンクグループのニケシュ・アローラ氏が手にした報酬総額は、破格の165億5600万円である。内訳は契約金など短期報酬が145億6100万円、株式報酬が19億9500万円。同氏は孫正義社長の後継者と目されており、米グーグルからソフトバンクグループに転じ、15年6月に副社長に就任した。
アローラ氏への高額報酬が「これから」への期待代であるのに対し、「これまで」の貢献代ということでは、オリックスの宮内義彦元会長が突出。功労金の44億6900万円を含め総額は、これまた破格の54億7000万円。自社業績への貢献代としては、アパート建設の大東建託の多田勝美元会長の退職慰労金30億1860万円を上回る、過去最高額である。宮内元会長は、創業メンバーの1人で社歴は約50年。業績拡大への貢献代をならせば1年1億円強という計算になる。経営トップの地位にあったときは固定報酬の1億650000万円(月額1375万円)を含め、報酬総額は2億円前後での推移だった。
コメリの捧賢一元会長も報酬総額6億6800万円のうち、功労金は5億2000万円である。