最終プレゼンで出た5グループのアイデアは「移動時間の短縮のための7社共通のサテライトオフィス」「労働時間削減項目をマネジメント層の人事評価制度に追加」「支社と本社の交換留学システム」「ハイパフォーマーの表彰」などです。

最終プレゼンのあとは各社でそれぞれが現場に落とし込めるよう、自社の経営層に働きかけていくことになります。

「大変なプロジェクトでしたが、営業女性は意志も意見もちゃんとある。熱中すると前向きなパワーがすごいと実感します」(杉野さん リクルート)

「ただ『時間を短くします』って私たちが宣言して、『今日から電話は5時以降とりません』となっても、競合他社にやられるだけという話も出ました。全体的に意識を変えていくのは同時進行でやらなきゃいけない」(西さん キリンビールマーケティング)

1社だけの改革は徐々に進んでいますが、結局は「自社が働き方改革をすることでライバルより損をしては意味がない」ということになります。しかし、今後女性という経営資源を失えば、人出不足、パワー不足は目に見えている。今から女性だけでなく男性も含む日本全体の問題として「働き方」の問題を変えていかなくてはいけない。

「女性だけの問題から、本人の意識、マネジメント層、評価軸などの本質的なところに働きかけるプロジェクトとなりました」(二葉さん リクルート)

「働き方」の問題は、他社と知恵を出し合う相乗効果も大きいとわかりました。さまざまな業種で、業界で、地域で、協働協業する「働き方改革」プロジェクトが立ち上がり、日本の働き方の本質を動かすようなムーブメントとなる、そんな確信を持った取材でした。

白河桃子
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊『格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)

撮影=向井渉