目標がハッキリしていれば「やらない力」が育つ

かつて教鞭をとっていたサイバー大学で、卒業研究に「ゲームのひきこもり」をテーマにした学生に聞いたのだが、小用を足すのに、すぐそばに転がっているペットボトルですます「ボトラー」や、いっそオムツをはいてしまう「オムツァー」までいるらしい。

彼によると、ネットゲーム中毒者たちは仕事にも就かず、だいたいが夜間を中心とした生活パターンとなっている。寝る・食べる・排泄する時間以外はすべて、パソコンの画面に向かい、主婦でも、子どもと旦那を送り出した後すぐゲームを始め、昼食はカップラーメン、夕飯は店屋ものやファーストフードですましてしまう。

こういう中毒にまで至らなくても、次から次へと新しい情報に接することで、自分の将来の夢を描く機会が減っていく。子どもたちのネット依存が問題になるけれど、自分が将来何になりたいかという目標がはっきりしていれば、目先の快楽を我慢する「やらない力」もついてくるわけで、子どものゲーム時間を制限するという対症療法ではなく、自らの行動を律する(Willpowerをつける)夢の育成をこそ考えるべきであろう。

私は『IT社会事件簿』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)でここ15年余に起こった事件事故を考察したとき、「デジタルのマグマ」という表現でデジタル機器を使っているうちに生じるどろどろとした心の葛藤に注目した。LINEの「既読」機能にふりまわされたり、メールが届くたびに知らせてくれるモバイル端末に囲まれていたのでは、どうしても夢見る機会は減っていく。

マクゴニガル先生は、意志の力を高める方法として、ちょっとした散歩をする、スポーツジムに通う、瞑想する、などの方法を上げているが、デジタル機器の前から意識的に離れる時間を持つことが、見失った夢を思い出させてくれるかもしれない。

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