本やドラマを、要約や切り抜き動画で見る人が増えている。本や読書の魅力を発信している読書インフルエンサーのしんやさんは「多くの人とつながれるようになり、話題についていくために見ておかなければいけないコンテンツが増えた。結果として、一つをじっくり味わうより、より多くを流し見ることに価値が置かれるようになった」という――。

※本稿は、しんや『「読む人」だけが得られる時間』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

ビジュアルコンテンツの概念
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

タイパ重視の裏で起きた変化

スマホが生活の中心に入りこんだことで、人々のコンテンツに対する価値観も変わってきました。

以前は、一つのものを安く長く楽しめることに価値があったのに対して、今は、限られた時間の中でどれだけ多く摂取できるかに価値が置かれやすくなっています。

いわゆるコスパ重視からタイパ重視への変化は、その象徴の一つです。

2022年に出版された『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ―コンテンツ消費の現在形』(稲田豊史著 光文社)にも、この要因については非常に詳しく書かれています。

【要因①】お金を多くかけずにコンテンツを入手できるようになった

一つ目が、コンテンツ一つあたりの値段が崩壊したことです。かつて、コンテンツを楽しむには、それなりのお金が必要でした。本を読むにもお金が必要だったし、映画は映画館に行ったり、DVDを借りたりするなどして、一つひとつにお金がかかりました。だからこそ、安い金額で長く楽しめることに価値があったのだと思います。

「ひとつを安く長く」から「より多く」へ

このころ、値段を気にせず楽しめるコンテンツといえばテレビが中心でしたが、今は状況が大きく変わりました。月額料金を払えば、Kindle Unlimitedという本が読み放題のサービスもあれば、映画やアニメ、ドラマを見られるサブスクもたくさんありますし、YouTubeやTikTok、Instagramなどに上がっているものであれば、無料で無限のようにコンテンツが流れてきます。

もちろん、サブスクであれば月額料金はかかっていますし、厳密には通信費などかかっていますが、一本の動画、一本の映画、一つの投稿に対して「いくら払ったか」を意識することは、ほとんどなくなっているはずです。

見放題という今では当たり前になったコンテンツのあり方は、コンテンツ一つあたりに対する価格感覚をほとんど消してしまい、「コンテンツ一つひとつを吟味する」という感覚も減退させました。

そうなると、気にするのはお金ではなく時間です。コロナ禍が終わり、忙しい日常に戻った現代人は、なおさらそうなっています。

安く長く楽しめることよりも、限られた時間でどれだけ多く楽しめるか、どれだけ多く知れるかのほうに価値観が移っていくのは自然なことなのかもしれません。