AIとSNSはまったく異なる

SNSも集合知形成の場に見えるかもしれない。そこでは多様な意見が飛び交い、時に斬新なアイディアや鋭い批評が登場するからだ。

野口悠紀雄『AIは最強の味方で、最悪の敵』(プレジデント社)
野口悠紀雄『AIは最強の味方で、最悪の敵』(プレジデント社)

しかし、SNSは「集合知形成のシステム」としては機能しない。なぜなら、そこには、統合アルゴリズムが欠けているからだ。

むしろ、SNSのアルゴリズムは、特定の意見や感情を増幅する偏りを持ち、エコーチェンバー(自分と同じ意見・価値観を持つ人々の中で情報が繰り返し強化される空間)や、フィルターバブル(自分の嗜好や過去の行動に合わせた情報だけが表示される状態)と呼ばれる問題を引き起こしてしまう。

組織における生成AI活用は、この点が大きく異なる。そこでは、目的志向的に知識を収集・整理し、共通目的に沿って提案・改善を図ろうとするからだ。これは、SNSとは対極の世界である。

つまり、生成AIの設計思想は、「ノイズの中から偶然を待つ」ことではなく、「積極的な知の構造化と目的志向的利用」を目指すことだ。

AIが集合知形成のエンジンになる

生成AIは、大量のテキストデータを扱う能力と、意味的に関連する情報を統合・要約する能力に優れている。

もし、業務報告、議事録、社内マニュアル、顧客応対ログなどをAIが継続的に分析し、それらを横断的に結びつけて提案や警告を出せるようになれば、それは「集合知システム」の萌芽だ。

たとえば、製薬会社が新薬の開発を模索する場合、研究開発部門、営業部門、カスタマーサポート部門、さらには外部パートナーが得ている市場情報をAIが横断的に結びつけることによって、既存の枠組みを超えた新たな開発アイディアが生まれる可能性がある。

あるいは、製造業において、生産ラインのトラブル報告と品質管理部門のデータを結びつけて、「異常の予兆」を提示するような仕組みも構築できるだろう。