外部ソフトウェアや委託先を通じて侵入される

4.機密情報を盗み、次の攻撃に備える

目立つ障害が起きなくても、情報が盗まれる被害は進んでいるかもしれない。

警察庁と内閣サイバーセキュリティセンターは2025年1月8日、「ミラーフェイス」と呼ばれる集団について注意喚起した。日本の安全保障や先端技術に関する情報窃取を主な目的とする、中国の関与が疑われる組織的なサイバー攻撃だと評価している。

公表資料では、政府関係者、シンクタンク、政治家、報道関係者などへの不正なプログラムを添付したメールや、製造、情報通信、学術分野などを狙った侵入が報告されている。

企業にとっての被害は、営業秘密や研究成果の流出だけではない。取引関係や業務の仕組みに関する情報が盗まれれば、それを別の攻撃に利用されることも考えられる。

実際、前出のボルト・タイフーンに関する米政府の報告では、攻撃者が事前にネットワークの構成、通常の利用状況、IT担当者などを調べていたとされる。盗まれる情報の中には、後の侵入や妨害に役立つものもある。

ただし、ミラーフェイスによるすべての活動が、台湾への武力行使に向けた準備だと確認されたわけではないものの、ここから読み取れるのは、日本も情報窃取の対象になっているという事実だ。「台湾で何かが起きてから警戒すればよい」とは考えにくい。

パソコンを操作する手元と、ネットワークセキュリティをイメージした南京錠などのグラフィック
写真=iStock.com/tadamichi
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5.取引先や外部サービスを経由して、被害が広がる

最後のポイントは、自分の会社が直接攻撃されなくても被害を受けることだ。

ここでは、2つの経路を分けて考えたい。

ひとつは、物の供給が途絶える経路である。港湾、製造元、運送会社などの機能が止まれば、自社のシステムが正常でも、部品や商品が届かなくなる。前述した名古屋港の事例は、そのつながりを示している。

もうひとつは、外部のソフトウェアや委託先を通じて侵入される経路である。こちらは一般に「サプライチェーン攻撃」と呼ばれる。カナダのサイバーセキュリティ当局は、供給元のソフトウェアを改変したり、取引上の信頼関係を悪用したりして、利用者に不正なプログラムを送り込む手法を説明している。

「商品が届かないこと」と「取引先を経由して自社に侵入されること」はどちらも企業同士のつながりによって影響が広がるが、別の被害だ。よって、同じ対策をすればいいわけでもない。

日米台の連携を支える企業やサービスへの影響を考える際にも、大企業や政府機関だけを見るのでは不十分だ。米政府の報告では、重要なサービスを提供する小規模な組織も、ボルト・タイフーンの被害対象に含まれている。

もっとも、日本の特定の中小企業が、台湾有事を理由に必ず標的になると断定することはできない。標的にならないとすることもできない。重要なのは企業の規模ではなく、「そこが止まると、何が止まるのか」という事実関係の把握である。

5つの被害が重なると、対応はさらに難しくなる

ここまでのポイントを、仕事と暮らしへの影響として整理すると、次のようになる。