行政・報道機関の発表に見せかけたニセ情報

これは実際に確認された投稿の引用ではなく、混乱を招き得る内容の例である。

もし、行政機関や報道機関の発表に見せかけたニセ情報が広まれば、不要な買いだめや移動を招くかもしれない。企業が誤った情報を信じれば、必要のない発注停止や出荷変更を行うおそれもある。

さらに考えたいのは、ひとつの嘘を信じさせるだけでなく、「何が本当か分からない」という状態をつくるリスクだ。正しい避難情報まで疑われたり、被害を知らせる発表が信用されなくなったりすれば、対応は難しくなる。

ただし、政府への批判や政治的な意見の違いを、安易にそのまま「外国の工作」と見なしてはいけない。確かめるべきなのは、発信元、根拠、日時、画像や音声の出所である。

WHOなど特定の国際機関を装う工作についても、台湾有事に関連する確かな事例を示さずに、既定の手口として断定するのは避けたい。

3.通信を妨げ、連絡と確認を難しくする

通信への攻撃は、単に「インターネットが使えなくなる」という話ではない。会社や家庭が、必要な連絡や確認ができなくなる問題だ。

代表的な手法のひとつが、大量の通信を送りつける「DDoS攻撃」である。アクセスを集中させ、対象のウェブサイトやサービスを遅くしたり、利用できなくしたりする。米国のサイバーセキュリティ・インフラ安全保障庁(CISA)も、その仕組みと対応策を説明している。

「No Internet Connection」と表示されたパソコン画面
写真=iStock.com/courtneyk
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日本でこうした障害が起きた場合、影響として考えられるのは、行政の情報ページを開けない、商品の注文ができない、配送状況を確認できない、といった事態だ。

一方、通信網への侵入には、連絡を止めるのではなく、情報を盗む目的もある。2024年12月、米国などの政府機関は、中国と関係する攻撃者が世界の大手通信事業者のネットワークに侵入し、広範な諜報活動を行ったと警告した。

通信を止める攻撃と、通信を通じて情報を盗む攻撃は、同じではない。どちらも警戒が必要だが、被害の内容や対応は異なる。

「通信速度を落とす訓練」と「攻撃者によって通信を妨害されること」も別の話であり、台湾で行われた訓練を、そのまま中国の攻撃手法の証拠として扱うことはできない。

有事や危機が発生した際に通信が遅くなったとしても、攻撃、設備の故障、利用者の集中など、原因を確認する必要がある。原因が分からない段階では、「中国による攻撃だ」と決めつけず、まず何が使えず、何が使えるのかを確かめたい。