ジュニアとは違うルートだからこその“何か”

橋本は、オーディションを受ける前の10代の頃から、その時点では途方もないものにも思えた「ドームに立ちたい」という夢を持ち、友にも語れるほどの勇気を持つ男である。5次審査では、他の候補生がアルバイトのためにレッスンに参加できず、怒られたりしている中、焼肉店のバイトを潔くやめてオーディションに集中するという、自分の中での優先順位づけもできていた。

2人にはアイドルとしての華だけではなく、20代の若さにもかかわらず、自分の役割を認識したり、価値判断ができたりするという人間としての習熟度の高さがあり、目を見張るものがあった。ジュニア経験こそないものの、それに代わる何かを、もっと言えば“ジュニアとは違うルートを通ってきたからこその何か”を彼らは持っているのだ。彼らが選ばれたことで、ジュニアの存在価値が貶められていると感じるのは短絡的である。

コンプラ研修、アイドルの心構えを説いてもなお…

だからこそ、女性への傷害で逮捕されるに至ったという点で、今回の猪俣の件は悔やまれるばかりである。

もちろん、猪俣も、佐藤勝利が「どんなに壁にぶつかっても自分の力で乗り越える」、菊池風磨が「バカみたいに練習する」と評するなど、その努力を認められての加入だった。タイプロ内での「候補生ランキング」のコーナーでは「努力がハンパないと思った候補生」で1位に選ばれている。

timeleszでは新メンバー加入後、会社のコンプライアンス研修を行い、アイドルとしての心構えなども先輩メンバーが教えてきたという。とはいえ、会見の際に菊池が「ひとりの人間の行動だとか、考えすべてを把握することは、あまりに難しかったです」と語っていたように、そして他のメンバーも猪俣のそのような側面に気づけなかったと口にしていたように、人のすべてを知るというのは難しい行為である。

人間が一面的ではなく、多面的な存在である以上、誰にでも“知らなかった一面”は存在する。だが、その相手がアイドルで、そして知らなかった一面が今回の逮捕に至るような性質のものだったときにそのリスクは膨れ上がるというのは、今回の件が証明しているだろう。