「ジュニア期間がなかった」は理由にならない

では、猪俣の逮捕は世間で言われているように「ジュニア期間がなかったから」と言い切れるかというと、そこには疑問が残る。

もちろん、ジュニア期間が長ければ、その間にボロが出て、発覚したはずだという意見には一定の説得力がある。

直近で思い浮かぶ例としては、もともとAぇ! groupのジュニア時代に所属していた福本大晴の例が挙げられる。福本は「コンプライアンス違反の疑いが発覚」したとして、契約解除された。現在も違反の内容の詳細は発表されていない。2023年12月の出来事で、結果、約半年後にAぇ! groupがデビューしたことを踏まえると、ジュニアという見定めの期間が長かったことで、ギリギリ今回のような大事にならなかったパターンと言える。

一方で、不祥事がすぐに契約解除に結びつかない例もある。2023年8月には、過去のジュニアの不祥事が出回った動画などによって明らかになった。そのときは活動休止や契約解除に至らず、「このまま活動を継続させていただく方が、これから社会人として成長していかなければならない3人にとって、本当の意味での自覚と責任を獲得することにつながるのではないかと判断いたしました」と、成長を見守る方針となった。

このとき不祥事を起こしたメンバーの中には、現在ジュニアとして活躍する者も含まれているため、ジュニアが成長を促す“社会”として機能していることが伺える。ちなみに、そのメンバーが起こした不祥事は賞味期限の切れたとされるシュークリームを壁に投げつけたというもので、そのメンバーの所属するグループは現在、不二家とのCM契約があるため、ジュニア期間の本人の成長によって“許された”と捉えることもできる。

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先輩の背中から学べないのは個人問題である

ジュニアが本格的な社会に出る前の“失敗も許され、立ち直る場所のある優しい社会”であると捉えれば、猪俣にもしジュニア期間があれば、事態は変わったのかもしれない、という考えがよぎってしまうのも確かだ。とはいえ、やはり「ジュニア期間がなかったから猪俣は逮捕されるようなことをした」とか、そこから転じて「タイプロは失敗だった」と断じてしまうのは早計だろう。

先輩のバックダンサーを務めることに象徴的だが、ジュニアの特徴は先輩の“背中を見て学ぶ”環境があることにある。もちろん、言葉にして教えてくれる先輩もいるだろうが、デビューして最前線にいる無数の先輩の背中がそこにはある。そこから何を学び取るかは自分次第であり、逆に言えば、自らの頭を使い、より多くを学び取った者がデビューを勝ち取っているというのは、今回の会見での菊池をはじめとするメンバーの聡明さが物語っている。

だからこそ、猪俣がtimeleszメンバーの背中から学べなかったことは残念に感じるし、それはやはり究極的には個人の問題であり、タイプロ自体やtimeleszの他のメンバーの問題にするのは論理の飛躍がすぎるだろう。

何より、人が罪を犯す際には複雑な背景があるはずで「タイプロのせい」「ジュニアじゃなかったせい」というように、単面的に断じる風潮には怖さすら感じる。少なくとも、今回の猪俣の行動の要因はひとつではないはずだと思いを馳せることが、菊池も難しいと語っていた、人間を知ることへの第一歩になるのではないだろうか。