小学生をあえて子供扱いしない

「迅速」とは、単に“返答”だけを急ぐということではありません。寄せられた声は当日のうちにデータ化され、翌日には「お客様の声ポータル」というシステムで社内に共有されます。

緊急性の高い内容は直ちに該当部門へ伝達され、原因究明と再発防止策の検討が始まります。さらに、トレーサビリティの仕組みにより、原料の出所も迅速かつ正確に追跡できます。迅速とは、組織全体が即座に動くことのできる体制を意味しているのです。

では、「親切」とは何でしょうか。切手の同封は、問い合わせに費用をかけていただいたことへの配慮です。しかしそれ以上に、親切さが表れるのが言葉遣いです。先述の、小学生に対する自由研究の返信の締めくくりの言葉は、「ごきげんようさようなら」でした。

もし、「自由研究、頑張って下さい」と書いていれば、大人から子供への一方向の励ましに聞こえるかもしれません。味の素は、相手を1人の人格として尊重し、大人同士の対話と同じ姿勢で応えます。親切さは、人と人との関係の中で生まれる信頼の出発点なのです。

「伝える」と「伝わる」は違う

②顧客と会社をつなぐ架け橋

企業が一方的に発信しているだけでは気づけない学びを、顧客は教えてくれます。

たとえば味の素では、CMの最後に「Eat Well, Live Well.(おいしく食べて健康づくり)」という英語のスローガンを、文字と音声で流しています。当初は、流暢な英語の発音で読み上げていました。ところがお客様相談センターには、こうした声が寄せられます。

「早口で、何を言っているかわからない」「言葉は、伝わらないといけない」

これらの声を受け、すぐに事業部門、広告部門と対策の検討が始まります。その結果、流暢な英語の発音の代わりに、CMで起用している2人の日本人俳優が登場し、1人が「Eat Well(イート・ウェル)」、もう1人が「Live Well(リブ・ウェル)」とわかりやすく区切って発音する形に変更しました。

そうすると今度は、「良い食生活を通じて良い人生を送る、という意味ですね」「感じのいい言葉です」という前向きな反応が寄せられます。これは、「ブランドを伝えることの大切さ」を顧客から教えられた出来事です。

お客様相談センターは、顧客の声を受け取り、企業の活動へとつなげる「架け橋」の役割を担っているということです。

一方で、お客様相談センターは顧客の声に従うだけの存在でもありません。企業の意図や背景を丁寧に説明する役割も担っています。