クレーム対応が顧客との関係を深める
重要なのは、ここで終わらせないことです。味の素のクレーム対応では、お客様相談センターと他部署が連携して、一方向だけのコミュニケーションで終わらせない工夫をします。具体的には、対応後に以下の内容のアンケートを取るようにしています。
・問題提起時の対応に満足したか
・調査結果報告に満足したか
・今後も、当社製品を選び続けたいと思うか
驚くべきことに、いずれの項目でも回答の90%以上が肯定的です。特に、最後の問いに対する回答が肯定的であるという結果は、象徴的です。クレームは関係の終了ではなく、むしろ関係を深める契機になっていることを示しています。
顧客の声を受け止め、改善につなげ、その過程を共有すること。その積み重ねによって、企業と顧客がより良いブランドを創造しているのです。
お客様相談センターは、単なる問題を処理する部署ではありません。顧客とともに商品を進化させ、ブランドを育てる共創のための架け橋なのです。
「本当に簡単か」を決めるのは顧客
続いて、「不満の声を聞き流すのではなく、価値に変えていく」――。その積み重ねが、信頼を育み、ブランドを強くしていくことを表す象徴的な事例を見ていきましょう。
まず紹介したいのが、「Cook Do」“極 麻辣麻婆豆腐用”の改善事例です。この商品は、豚ひき肉、豆腐、長ねぎと一緒にフライパンで炒め、最後に別添の花椒粉を加えて仕上げる中華料理用の調味料です。花椒とは、舌がしびれるような独特の刺激(麻味)が特徴の、中国原産のスパイスです。
この商品に対して、お客様相談センターに「塩味が強い」「花椒粉を入れるタイミングがわからない」といった声が寄せられました。
「Cook Do」は「特定のメニューを手軽に再現できること」を謳った調味料です。しかしそもそも、企業が「簡単に調理することのできる調味料を開発した」として商品を発売したときに、「本当に簡単にできるかどうか」を判断するのは、誰でしょうか――。それは、顧客です。
料理は、算数や物理のように誰がやっても同じ結果になるものではありません。言葉の受け取り方、調理経験、使っている道具の違いによって、仕上がりは大きく変わります。メーカー側では、「簡単にできる」と考えていても、実際の作り方の違いによって、想定どおりの味が出ないことがあるのです。
