利害や対価よりも大切な「信頼」
プロの料理人から“技術”を教わるために必要なのは、利害や対価ではなく、人としての関係性です。その要点は、次の3つに集約されます。
①リスペクト
プロの料理人は、自分の腕で多くの人を幸せにしてきた名人です。そうした方に対して心からのリスペクトを持てる相手でなければ、「教えたい」とは思ってもらえません。
企業同士のように、契約や対価が先に立つ関係とは異なり、「この人なら伝えても良い」と思ってもらえるかどうかが出発点になります。
②同じ目線
味の素では、研究者自身が料理学校に通い、調理の現場を理解したうえで、プロの料理人と同じ言葉で会話できるようにしています。同じ「調理すること」を知っている人だからこそ、技術を教えたいと思ってもらえるのです。元料理人をコーポレートシェフとして採用し、共に開発する体制を整えることも有効な方法になっています。
③フィードバック
解析によって得られた知見は、味の素で囲い込むことなく、教えてくれたプロの料理人と共有しています。火加減や鍋の振り方、温度と味の関係など、素人との違いやおいしさの決め手を可視化し、伝えています。そこには、特許で囲い込み、競争優位性を築こうという発想はありません。料理人にとっても、自身の強みを再発見し、新しい料理や表現への意欲を高めるきっかけにもなっています。
ここには、契約や対価の関係を構築する企業間の「価値実装の型」とは異なり、リスペクトと対話の積み重ねによって成立する「信頼の型」があるのです。
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