技術を「教わる」ために必要な条件
その後40年以上にわたり、味の素は販売力、GF社は技術力による連携を強みに、「マキシム」「ブレンディ」といったブランドを誕生させ、コーヒー事業を展開し続けました。現在では、AGFにおけるGF社の株式を味の素がすべて取得し、それまで蓄えてきた技術も、味の素グループが引き継いでいます。
企業同士で技術を教わる場合に重要なのは、教わった技術を活かして事業を成長させられる仕組みを示せるかどうかです。コーヒーの合弁事業では、技術を教わる対価としてロイヤルティを支払うという形で対価関係は成立していました。
しかし、それにも増して重要だったのは、GF社が考える「日本で伸び悩んでいた事業を成長させたい」という戦略目的を実現できる枠組みを提示できたことでした。現に、味の素の販売力を活かすことで、数年間で事業を急拡大させることに成功しました。
“技術”を持つ相手には、自社だけではその価値を活かすことのできないマーケットがあります。技術を教わろうとするならば、その価値を、事業の中で最大限に引き出せるようにすることが肝要です。
その際には、相手の大切な技術を適切に管理することと、技術の価値を最大化する提案力などの力を備えていることが求められます。これこそが、企業から技術を「教わる」ための「価値実装の型」です。
企業と料理人では異なる教わり方
たとえば味の素は、GF社との合弁事業に限らず、クノール事業などでも、相手方の技術を事業に取り込み、その技術を活かした事業の価値を最大限に引き出す仕組みを提供してきました。それは、味の素の販売力であったり、日本のマーケットに合致した販売方法の提案力や、素材を最終製品へと仕立てる開発力であったりします。
また、その過程で開示される技術やノウハウは、競合がいる中での事業として扱われる以上、外に漏れないよう管理する必要があります。GF社との間では、使用できる地域や製品の範囲に加え、秘密を守るなどの義務を契約で書面化しました。これを受けて味の素の内部では、技術やノウハウについて管理のルールを設けながら、事業を推進しました。
味の素の「教わる」という姿勢は、「調味料」というカテゴリーでも同じく発揮されています。
ここからは、中華合わせ調味料「Cook Do」の取り組みに話を移します。プロの料理人との信頼関係の中から技術を教わり、家庭で本格中華を再現できるようにした事例です。
これは、契約や対価ではなく、人と人との関係そのものを基盤とする「信頼の型」を示すものです。
