五十肩との見分けは難しい
肩の痛みは、多くの方が経験することです。
20代後半から、肩こりに悩む方が増えていきます。40代で多いのは四十肩、50代で多いのは五十肩です。といっても、四十肩と五十肩に実質的な違いはありません。ですから、この本ではまとめて「五十肩」と呼ぶことにします。
そして65歳を過ぎると、五十肩に代わって、けんばん断裂の方の割合が急激に増えます。60代や70代で五十肩になる方もいますが、その割合は逆転します。
そして、80代になると……。驚かれるかもしれませんが、80歳以上になると、痛みと関係なく30~50%の方にけんばん断裂があることがわかっています(*2)。
こういうデータは、実際に患者さんを診ている私の肌感覚とも一致します。
肩の痛みの多くは、「肩こり」「五十肩」「けんばん断裂」です。この中で肩こりだけは、五十肩、けんばん断裂と簡単に識別できます。それは痛む位置が違うからです。「肩こり」では腕よりも首や背骨に近いところが痛み、「五十肩」と「けんばん断裂」では腕に近いところが痛みます。
ですが、「五十肩なのか、けんばん断裂なのか」の識別はとても難しいのです。実は整形外科医でも診断を誤ることがあります。なぜ、診断が難しいのでしょうか。理由のひとつは、五十肩の症状とけんばん断裂の症状に共通点が多いことです。
「痛みの強さ」では判断できない
たとえば、このような症状は、五十肩でもけんばん断裂でも起こり得ます。
・腕を横に出して上げたり下げたりすると痛い
・痛いところを揉むと、痛みが増す
・夜、眠れないほど痛む
・頭を前後左右に動かしても、痛くない
次のような識別法も紹介されていますが、例外も多いので、痛みだけでは区別しづらいのが本当のところです(*3)。
・肘ひじを直角にして脇を締め、両手のひらで押し合って、痛くなければ五十肩、痛ければけんばん断裂
・痛いほうの手を反対側の手でつかんで引っ張り合い、痛くなければ五十肩、痛ければけんばん断裂
実際、五十肩では大きな痛みがありますが、けんばん断裂では大きな痛みがあることもあれば、ほとんど痛みがないこともあります。どちらの痛みのほうが強い、ということも言えません。
五十肩のほうが軽いような気がするかもしれませんが、けんばん断裂よりも痛い五十肩はよくあります。

