コメの価格が急激に下がった。現役農家のSITO.さんは「コメの価格が上がっても下がっても、JAや農水省がバッシングされるが、それは本当に建設的な行いだろうか」という――。
岡山県産の新米を扱うスーパー。前年同時期より4割近く安価で販売している=2026年9月8日、岡山県岡山市南区築港新町
写真=山陽新聞/共同通信イメージズ
岡山県産の新米を扱うスーパー。前年同時期より4割近く安価で販売している=2026年9月8日、岡山県岡山市南区築港新町

コメ価格にまつわる7つの論点

コメの価格が大幅に下がりました。最近は、私が以前の記事で提示した農家の再生産に必要と考える適正な水準(5kg2500〜3000円以下)に入っている地域が多いのではないでしょうか。

さて、少し前に私が書いた記事「JA農協でも農水省でもコメ農家でもない…2026年度もコメの価格を吊り上げ続けている“真犯人”」(※1)が、農業経済学の専門家である山下一仁氏に、同じプレジデントオンライン上で批判されました(※2)。

私が書いた記事は、今の農業実態に基づき、米価高騰についての意見を詳しく述べたものでした。

このたびの山下氏の記事には疑問に思うところが多いため、論点を7つ挙げて整理したいと思います。私がもっとも問題視しているのは、山下氏が「では誰がコメ騒動を引き起こし、コメ価格を吊り上げてきたのか。犯人は、JA農協と農水省である」(※2)と断言しながらも、これから述べるように十分な根拠を示されていないと思われる点です。

ここから一つずつ、わかりやすく論じていきたいと思います。

※1 プレジデントオンライン2026年7月30日公開
※2 プレジデントオンライン2026年8月11日公開

論点1:現在のコメの価格は高くはない

山下氏は、先日も「価格が高止まりしている」とされていました(※2)。昨年は「残念ながら来年秋まで『5kg4200円』が続きます…農水省とJA農協がいる限り『コメの値段は下がらない』そのワケ」という記事を出しました。その後、「コメ価格は下がっても5kg2500円まで」(※3)と下方修正しています。

消費者が購入する精米5kgの価格は、2025年12月末から年明けにかけて月次ベースで4337円に達したのをピークに、現在に至るまで下降を続け、8月3〜9日の数値では25%減の3220円でした。その後、昨年度産の在庫が積み上がった状態で、8月後半から新米の収穫が始まったため、米価はさらに低下しています。

【図表1】コメの平均小売価格の月次推移
昨年12月をピークに、コメの価格は少しずつ下がってきていました(出典=農林水産省「米に関するマンスリーレポート」を基に筆者作成)

山下氏は、2024年産との比較で価格が高いと指摘していて、これは事実です。しかし、ここで問題にしたいのは、価格が高いか安いかを論じる基準です。私は、コメの価格は市場の需給によって多少は上下するとしても、農家が再生産を続けられる水準を下回ってはならないと考えます。コメの全算入生産費(生産にかかるお金)は、令和5年に玄米60kgで平均1万5944円。ですから、私は以前も次のように書きました。

今現在のコメの適正価格を出すことは難しいですが、精米歩留まりや流通経費を考慮に入れた上で安定した農業生産を担保するには、玄米60kgあたり2万円前後(店頭売りで5kgあたり2500〜3000円程度)が妥当ではないでしょうか。(※1より引用)

この計算は、以下の計算式に基づいています。山下氏は卸・小売マージンを35%と仮定して試算していましたが(※4)、現場の感覚では実費を含むので、もう少し高いと考えられます。

(2万円÷60kg)×5kg÷0.91(精米歩留)×1.40(流通マージン)=約2564円

さらに今は物価がどんどん上がり、肥料や燃料なども以前に比べて高くなっています。農家の生産コストも上がっているのです。

こうした採算に見合う価格が、市場で自然に実現するとは限りません。実際の小売価格は需要と供給で決まるものであり、再生産を割り込むような下落を防ぐには、需給調整や備蓄の運用をどう設計するかという議論が欠かせません。このことについては論点6で改めて述べます。

【図表2】コメの平均小売価格の年次推移
コメの小売価格は、今回の高騰前は長らく5kg2000円前後と安価に推移していました(出典=農林水産省「米に関するマンスリーレポート」を基に筆者作成)

※3 プレジデントオンライン2026年5月15日公開
※4 プレジデントオンライン2026年6月17日公開