JA・農水省バッシングは何も生み出さない
コメの価格が上がっても下がっても、農水省とJAへのバッシングが高まりを見せます。
確かに、農水省やJA、農業政策にはさまざまな課題があり、多方面からの検証や批判は必要でしょう。ただし、単純に敵視するだけでは、むしろ複雑な実態や問題の本質を見えにくくしてしまいます。
現実の農業は、気候、流通、価格形成、国際情勢、消費者の食生活、生産者の事情など、さまざまな要素に影響されます。その中で、JAや農水省に改善すべき点があるなら、何をどうしたらいいのかを是々非々で、実際の事情やデータに基づいて前向きに議論すべきでしょう。
コメは日本人の暮らしと文化を支えてきた大切な主食であり、いざというときの「食料安全保障」の要でもあります。価格が上がったから作らなければいい、安い外国産を輸入すればいい、という単純な話ではありません。
なぜなら、国際情勢の悪化、異常気象、円安、物流の混乱などもあり、必要なときに必要な量のコメを輸入できるとは限らないからです。
この先も国産農産物が食卓に届く仕組みを
食料安全保障とは、国民が生きていくために、今ある在庫を確保するだけでなく、将来にわたって食料を生産し続けられる力を守ること。
そのためには、農家が生産を続けられるだけの所得を確保し、農地や水利施設を維持し、今の担い手を育て、農業技術を磨き、それらを次世代へとつないでいく必要があります。一度、国内農業の生産基盤が失われると、不作や国際情勢の変化によって供給が逼迫した際に、短期間で食料自給力を回復させることは困難になります。
また、農地は単なる生産地ではありません。食料を生み出す基盤であると同時に、水源涵養、洪水緩和、地域社会の維持、災害時の供給力といった多面的な役割を担っています。価格には反映されにくいのですが、いずれも重要な機能です。
こうしたことと同時に、当然のことですが、消費者が無理なく買える価格を維持することも重要です。
これらを踏まえ、今回の米価高騰について誰かを犯人にして責めて終わらせるのではなく、10年後も20年後も国産農産物が食卓に届く仕組みをつくることを、専門家や農家、JA、農水省、政府、そして一般の人々も含めてしっかり議論していけたら、と私は考えます。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます


