「正しい食事」が集中力の土台になる
本書でも紹介しましたが、「集中力」とは、ワーキングメモリや注意力といった各能力の複合体を意味します。すなわちこの研究は、健康的な食事を実践すれば、どんな人でも集中力が上がることを示したわけです。
もちろん、ここで扱われたデータはすべて観察研究であり、必ずしも地中海食が集中力に効くと実証されたわけではありません。その点で注意は必要ですが、脳機能の働きが食事に左右されることはほぼ確実です。
食事で集中力が上がる理由はまだわからない点が多いものの、現時点での科学界は次の栄養素を重視しています(※7)。
・鉄分、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル
・ビタミンD
・葉酸、ビタミンB12
・オメガ3脂肪酸
・コリン
・必須アミノ酸
・S‐アデノシルメチオニン
いずれも脳の働きに欠かせない成分で、不足すればうつ症状や感情のコントロール不全が起きたりと、メンタルに多大な悪影響をおよぼします。正しい食事こそが集中力の土台になるゆえんです。
もっとも、たんに「脳が喜ぶものを食べよう!」と言ってみたところで実効性は低いでしょう。必要な栄養素で脳を満たすためには、もっと具体的で実践しやすいガイドラインが必要です。
脳の劣化を防ぐ食事法「MIND」
そこで本稿では、「MIND」(マインド)という食事法をご紹介します。これは「Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay」の頭文字を取った食事のガイドラインで、日本語に訳せば「神経変性を遅らせるための地中海式&DASH食介入」となります。
仰々しい名前ですが、「脳の劣化を防ぐために開発された食事法」ぐらいに解釈していただいて構いません。先に紹介した「地中海食」を栄養学の観点からブラッシュアップし、脳への作用を最大に高めたのが特徴です。
認知機能の低下から身を守るテクニックとして一定の評価があり、たとえばラッシュ大学による実験ではうつ病が11%改善し、アルツハイマーの発症率が53%も低下したとの結果が出ています(※8)。科学的に脳のケアを行いたいなら、最初に試すべき手法と言えるでしょう。
「MIND」は、大きく3つのルールでできています。
①脳に良い食品を増やす
②脳に悪い食品を減らす
③カロリー制限はしない
食事の量を減らす必要はなく、お腹いっぱいになるまで食べても問題なし。「脳に悪い食品」も絶対量を減らせばいいだけなので、毎日の食事から完全に排除しなくても構いません。