インフルエンザの感染率も低い
ここまでは、内藤裕二氏に腸内細菌の観点から見た長生きの秘訣を伝授してもらったが、モデルケースと呼べるほど理想的な食生活を送っているのが、京都府の北に位置する京丹後地域の人たちだ。
京丹後市役所による昨年9月の発表によれば、京丹後市における100歳以上の高齢者は121人。これを人口10万人あたりの数に直すと約245人となり、なんと全国平均よりも約3倍も100歳以上の長寿者がいることになる。
京丹後市は2013年に116歳で亡くなり、男性長寿世界一としてギネスに認定された木村次郎右衛門さんが生涯を過ごした地としても知られる。そんな京丹後地域の人たちの長寿の秘訣は、どこにあるのだろうか。
内藤氏は17年からこの京丹後地域(京丹後市、宮津市、与謝野町、伊根町)で65歳以上の住民約1000人を対象に、食事、運動、血液検査、血管年齢、腸内細菌など2000項目ものデータを15年にわたって追跡する疫学調査「京丹後長寿コホート研究」に取り組んでいる。
この研究から見えてきたのは、京丹後地域の高齢者は単に長命なのではなく、高齢になっても心身ともに元気な「健康長寿」だという事実だ。研究によれば、血管年齢は全国平均より約10歳も若く、その後の血管年齢の上昇もゆるやかな傾向が見られるという。さらに大腸がんの罹患率は京都市内の2分の1以下、認知症の発症率も全国的に見て低い水準にある。加えて、インフルエンザが全国的に流行した際も京丹後地域の高齢者は感染率が非常に低いということもわかっている。
内藤氏が京丹後地域と京都市内に住む65歳以上の高齢者それぞれ51人の腸内細菌を比較解析したところ、京丹後地域の高齢者は先述の酪酸菌に属する「ファーミキューテス門」などの腸内に有益な菌が多いことがわかった。酪酸菌が作りだす酪酸は、大腸の上皮細胞のエネルギー源となり、免疫の暴走を抑える制御性T細胞を増やす働きがあるとわかっている。つまり、腸の炎症を鎮め、全身の老化にブレーキをかける鍵を握る菌が多いということだ。また、酪酸菌が多い人ほど筋肉量も多く、高齢者の大敵である加齢による筋肉減少(サルコペニア)予防にもつながる可能性が示されている。腸内細菌の観点から見ても、京丹後地域の人々は長生きしやすい環境で生活しているといえそうだ。
根菜を多く摂りタンパク質は魚から
では、京丹後地域の人たちは、日々どのような食事を摂っているのだろうか。内藤氏らの食事調査によれば、京丹後地域の高齢者は京都市在住者に比べて、野菜、果物、豆、イモ、根菜、海藻、そして麦ごはんや玄米といった全粒穀類を食べる頻度が高いという。これらの食事に共通するのは、いずれも食物繊維、中でも腸内細菌のエサとなる発酵性食物繊維が豊富な食材だという点だ。
食事調査から食物繊維の摂取量を推定する調査でも、緑黄色野菜以外の淡色野菜から食物繊維を多く摂取していることがわかっている。淡色野菜の多くはイモなどの根菜類にあたるため、京丹後地域の人たちはやはり発酵性食物繊維を多く摂っているといえそうだ。
また、京丹後地域でよく食べられている食材の一つが取れたワカメを水洗いし、天日干しにした「板ワカメ」だ。ワカメを乾燥させる場合は一度お湯に通すのが一般的だが、板ワカメは水洗いをしただけで干すのが特徴だ。京丹後地域では板ワカメで味噌汁などの出汁を取るだけでなく、おやつとしてそのまま食べることも多いという。
小腹がすいてもお菓子などを食べず、食物繊維やミネラルが豊富なものを間食に取り入れることも、長生きの秘訣かもしれない。
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