ビザ申請者の家族も高い英語力が求められる

またイギリスではこれまで人手不足のために比較的寛容だった熟練労働者のビザの取得もむずかしくなります。

ビザの取得には高い給与基準または大学院レベルの資格が必要になり、申請者とその扶養家族もイギリスの大学入学レベルの英語力が要求されるようになります。

現在の中学卒業程度のレベル(「GCSE=ジー・シー・エス・イー」という全国統一の中学卒業認定試験合格と同等)に比べると要求レベルが恐ろしく上昇するわけです。

また介護職に従事する外国人のビザ発給も停止することになりました。

介護人材は常に不足しているため、いったいどうやって労働者を確保するのかと業界や高齢者、家族から大変な批判の声が上がっています。ちなみにイギリスの介護士はその多くが外国人です。

都市部の低賃金労働者は外国人だらけ

このような厳しい政策の背景には、コロナ後にもイギリスへの移民の流入が止まらず、移民がイギリスのEU離脱の前よりも増えてしまった現実があります。

EU離脱の前は、EU国籍者はイギリスで働いたり、住むのにはビザを取る必要がなかったので、EU新規加盟国の東欧の人たちが低賃金労働に従事していました。

制服を着た道路清掃職員
写真=iStock.com/Oleg Elkov
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都市部だとレストランやホテルの従業員、清掃員、建築作業員だけではなく、医療関係者や介護士、店員などサービス業や“手に職系”の仕事の人のほとんどが外国人ということが多いです。

とくにEU離脱の前に多かったのがポーランドの人で、バルト三国やハンガリー、チェコといった東欧の人が多くを占めました。東欧の人々はその多くが大卒で英語をはじめとする複数の言語が流暢、働き者で母国で職業訓練を受けているので優秀な人が多いのです。またソフトウェア開発やシステム運用なども東欧の人が集まっていました。

2004年から2021年のポーランド人の人口は81万人あまりになり、EU出身者の21%でトップを占めていました。2位がルーマニアの55万人で14%、3位がアイルランドで10%です。

しかしEU離脱後はビザ取得のむずかしさや母国の経済状況向上で多くが帰国してしまいました。とくにポーランドは近年景気が良くなってきたので、物価が高くビザ取得も面倒くさくなったイギリスを後にした人が相次いでいます。