ホームグラウンドは「日常生活」
老いが進む中で、新たな世界を切り開いたり、自身に変革を起こしたりすることも簡単ではなくなってくる。また行動範囲もさらに狭くなる。
そこでのホームグラウンドは、日常生活であり、その中に最大限の楽しみを見つけることが基本になるだろう。
このように考えてくると、個人としてどう対処するかということだけではなく、近代社会の中で忘れてしまった過去の老いの思想や対処の仕方を再発見することも必要だ。
そのひとつの例として、橘曙覧の「独楽吟」を紹介したい。
橘曙覧の「独楽吟」
幕末の歌人、橘曙覧(1812-68年)は、「独楽吟」という連作和歌を詠んだ。これは「たのしみは」で始まり、「……とき」で終わる形式の歌で、全部で52首ある。
曙覧は、花鳥風月を詠むことが多かった時代に、日頃の暮らしぶりを歌にした。日常生活の小さなことに喜びを見出した作品は、正岡子規や斎藤茂吉といった後世の文学者から称賛されている。
曙覧は福井藩の生まれで、当時の福井藩主・松平春嶽も独楽吟を高く評価し、狩りのついでに曙覧の家を訪ねたこともあった。

