リスクが高いのは「1人暮らし」よりも「孤立している人」

ごく少数の絆で満足できる場合があるのと同様に、集団のなかにいても孤独を感じ、その結果として身体がストレスを感じる場合もある。ここで衝撃的な例を紹介しよう。長寿研究に携わっていた疫学者のローラ・フラティリオーニの研究による観察では、強力な社会的ネットワークのある人は認知症を発症する率が低いが、それは社会的関係がポジティブである場合に限られていた。子どもとの関係が悪い人は、子どものいない人よりも認知症のリスクが高かった。

じつのところ、悪い関係による害は、よい関係による利益以上に大きいのかもしれない。さらにこの研究では、社会に適応した大人に不可欠な要素と考えられがちな結婚と子どもの誕生は、認知症リスクが低い状態になるために必須ではない、という結果が出ている。