〈「倫理的に良くないことだとは思う」他人の給与明細を買い取って“1本3000円”で販売…「給与明細買取屋さん」が明かす、これまで最も売れた明細〉から続く
Xで10万人以上のフォロワーを持つ「給与明細買取屋さん」。“ホワイト企業を次世代に”を掲げて2021年から活動を開始、4年間で約1100人の給与明細を買い取り、令和の知られざる給与事情をXとブログで明かしている。
さまざまな業界、企業の裏事情を知る給与明細買取屋さんに「ゆるふわ労働でも高収入を得られる最強業界」や「驚愕のブラック企業」などを聞いた。(全3回の2回目/続きを読む)
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「年収200万円」もザラな、ブラック業界とは?
大量の給与明細を買い取るなかで見えてきたのは、大っぴらには公開されていない、さまざまな業界や企業の実態だ。そのうち低収入業界として給与明細買取屋さんが挙げるのは「飲食・宿泊・サービス」「保育士」「介護・福祉」「公務員」「アニメ-ター」など。これらの業界は、賃上げ機運が高まる昨今でも給与水準が5年前からさほど変わらず、むしろ物価高などの影響で以前より貧しくなっているという。
「例えば、飲食業界は全産業の中でも離職率が非常に高いとされていて、その背景には低賃金・長時間労働があります。これまで話を聞いた人の中には『週1の休日に遊ぶ娘がよそよそしい』という人もいました。それくらい、仕事に忙殺されているのに、給料はなかなか上がらない。それでもハマれば辞められないおもしろさはあるようですね。また、従業員ではなく複数店舗を経営するオーナーは、儲かっている人もいます」
保育士や介護士は、国が運営費や報酬の基準を定めており、そもそも収入が上がりづらい構造にある。2024年度に、保育士は人件費が前年度比10.7%増、介護士は介護報酬の加算率が最大2.3%引き上げとなったが、それでも平均年収は300万~400万円ほどにとどまるという。特に、介護士は夜勤が多く、認知症の患者などによる暴力や暴言、セクハラに遭遇するなど過酷な労働環境にある。
公務員は地域差があり、地方公務員は30歳で年収400万円水準だ。大企業のメーカーやIT業界と比較して大幅に劣り、仕事はなくならないが退職者は多い傾向がある。未だ残るアナログ文化や上下関係のストレス、2~3年に1度あるジョブローテーションでスキルがつきづらい側面もあり、低賃金だけでなくキャリアに悩む人も多いと給与明細買取屋さんは話す。
アニメーターは労働環境が厳しく、年収200万円など極端に低収入な企業も少なくない。深夜・早朝の業務が発生する、残業代が出ない、納期が厳しいなど、どこも似たりよったりのようだ。

