20年間、組織論をないがしろにしてきた日本企業

競争力のある企業の特徴とは何なのだろうか。私は大きく2つの特徴があると思っている。

ひとつは優れた戦略を構築できる企業である。戦略とは私の言葉で言えば、企業が他の企業と競争するための見取り図のようなものであり、これがないと経営が行き当たりばったりになる。その結果、資源だけが無駄に浪費され、最後に何が達成され、何ができなかったのかも明確にならない。

ただ、どんなに優れた戦略が準備されても、それをきちんと実行する体制が伴わなければ絵に描いた餅である。単なるプランだけとなり、結局は失敗した戦略と烙印が押され、市場が予期せぬ方向に変化した、競争相手が勝っていた、従業員に危機意識が足りなかったなど一見、合理的な説明がなされる。

言い換えると競争力のある企業とは、優れた戦略をもちかつそれを実行する体制、つまり同時に組織をもつ企業だと考えるのである。少し単純化がすぎるかもしれないが、大まかに言えば経営とは戦略論と組織論に尽きるのだ。

そして、こうした視点から考えると、私の眼には、過去20年ほど、日本の企業の多くは、優れた戦略を考える訓練は一所懸命やってきたが、それを実行する組織については、きちんと考えることを怠ってきたように映るのである。その意味で、過去20年ほどは、戦略論の時代だった。

試しに考えてみてほしい。これをお読みの皆さんの企業では、例えば5年前に比べて、組織が弱体化している状況が見られないだろうか。組織の弱体化とは、もう少し具体的に言えば、働く人の組織内の結束力が弱っている、働く人のモチベーションが低下している、職場に活気がなくなっている、職場でのコミュニケーションが減った、OJTが機能しないようになった、メンタルで潰れる人が増えたなどの現象に顕れる症状である。こうした症状は働く人にとってもいわゆる不機嫌な職場で働くという意味で好ましくないが、企業としても戦略実行力の低下に繋がるため重要な問題である。