<strong>東京医科大学皮膚科学講座主任教授 坪井良治</strong>「男性が薄毛になるメカニズムはすでに解明されています」
東京医科大学皮膚科学講座主任教授 坪井良治「男性が薄毛になるメカニズムはすでに解明されています」

日本で実施されたプロペシアの臨床試験に携わった東京医科大学皮膚科の坪井良治教授がAGAの特徴を次のように説明する。

「薄毛の顕れ方には多少のバラツキはあるものの、一般的には思春期以降に始まり、徐々に進行して40代で顕著となるが、日本人の場合は20代後半から30代に顕著となる。男性の前頭部と頭頂部の頭髪が軟毛化して細く短くなり、最終的には額の生えぎわが後退して頭頂部の頭髪がなくなってしまい、側頭部と後頭部の毛はほとんど抜けない状態です」

つまり、毛髪が成長するヘアサイクルの途中で、毛髪が十分に太く長く成長する前に抜けてしまい、全体として薄毛が目立つという現象だ。禿げ方に特徴があって、額の生えぎわかてっぺんのいずれか、あるいは両方の毛が薄くなっていくのだという。

ところが研究が進むにつれ、AGAの発症のメカニズムが解明されてきた。それでは、その主な原因は何なのか。坪井教授が説明を続ける。

「男性ホルモンにテストステロンというものがある。これが5α-還元酵素で活性化されるとDHT(ジヒドロテストステロン)になる。これが脱毛シグナルを出し、毛髪の成長を妨げることで起こる症状がAGAであることが突き止められた。さらに5α-還元酵素にはI型とII型があって、AGAを発症させるのはII型だということもわかった。したがって、DHTが出す脱毛シグナルをストップさせれば、AGAは防ぐことができる症状だということになるが、フィナステリドはテストステロンがDHTになるのをブロックする。このDHTは前立腺と前頭部と頭頂部の髪だけに作用します」

図2:毛髪の状態への懸念(年代別)

図2:毛髪の状態への懸念(年代別)

このフィナステリドを主成分とするプロペシアは、テストステロンを毛髪に悪さをするDHTに変換する5α-還元酵素II型を選択的に阻害して脱毛シグナルを抑え、AGAを改善する初めての薬だ。

ところで、フィナステリドの効果はいかがなものだろうか。万有製薬が行った国内のプロペシア投与試験では、1年後に頭頂部の毛髪が改善した患者は58%、2年後68%、3年後78%だ。とくに抜け毛の進行抑制も含めた改善効果は3年後では98%にもなっている。また、前頭部では1年後58%、2年後61%、3年後72%の患者が改善し、抜け毛進行抑制・改善効果は97%だ。

(吉田茂人=撮影)