「100年に一度の大雨」とはどういう意味か

桝谷さんによるとそれは、「これまで、この場所では過去にこのような水害があったから、その量を流すことができるように、川の大きさを決めましょう」などと考えて決めるのだといいます。小田川などの岡山の河川も、それまで経験してきた雨の量から、堤防を作ったり川底を掘削したりしているのです。

なお、国が管理している多くの川は、「100分の1~200分の1の確率で降ると考えられる大雨(1/100年)にも耐えられるようにつくりましょう」という前提で整備されることになっています。

高梁川は150分の1の確率で降る雨の量を考えて、整備を進めていますが、関東の荒川や利根川など、決壊したら大災害が発生するような大きな河川では、200分の1の確率で降る大雨にも耐えられるように整備されています。この「○○分の1の確率」という言葉の意味するところは、岡山大学学術研究院・環境生命自然科学学域の西山哲教授に聞きました。

【金藤】雨の降る確率の表現がよくわかりません。たとえば100年に一度の雨というのはどう考えたらよいのでしょうか?

【西山】100年に一度発生する洪水の確率を専門的には「1/100年」と表現しますが、正確には一年のうちに発生する確率のことを指します。なんとなく、「100年に一度発生する洪水」というと、「100年生きるとしたら、その間に一度は経験するかもしれない雨が『1/100年』なのかな」と思うかもしれません。

「30年間で数%の確率」だった能登半島地震も起きた

【西山】しかし、「1/100年」は一年間にその規模を超える降雨が1回以上発生する確率が1/100(1%)であるという意味です。つまり、1%の確率で毎年発生する可能性があるのです。「1/100年」は、一度発生すれば100年間は決して起こらないと考えてしまいそうなのですが、そうではありません。

金藤純子『今すぐ逃げて!人ごとではない自然災害』(プレジデント社)

「1/100年」の場合、3年以内に起こる確率は、ほぼ3%です。あくまでどのような大きさのことを表現しているのかであって、次の災害がいつ起きるのか、絶対にその大きさになるのか、などを表現するものではないのです。

【金藤】要は、「1/10年の規模の洪水」よりも「1/100年の規模の洪水」の方が、大きな洪水と捉えること、そして「1/100年」という表現があっても、可能性は少ないけれども毎年発生することがあり得る、ということですね。

【西山】令和6年能登半島地震でも、2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は数%というデータが公開されていたのですが、その数%しか発生しないという地震が実際に起きてしまいました。繰り返しますが、「1/100年」の雨も、ひょっとしたら明日発生するかもしれないと考える必要があります。

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