住調と国勢調査では、世帯数が大きく異なる

居住有り住宅数は、本来、世帯数と同程度か世帯数よりも多くなるはず(学生や単身赴任の場合があるからだ)だが、令和5年住調の住宅総数は約6502万戸で、そのうち居住世帯有り住宅総数は約5564万戸となっている。

一方で、調査が行われた2023年1月1日現在の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の世帯数は約6026万世帯となっている。

その差は、6026-5564=462万世帯と非常に大きく、国勢調査の世帯数6026万に対して居住住宅数が5564万しかないのは明らかにおかしい。これは、少なくとも数百万の単位で、実際には人が住んでいるにもかかわらず空家だと判断された住宅があることを強く示唆している。

もし、462万戸が空家でないとすれば、空家約900万戸は実際には438万戸となり、空き家率は6.7%となる。そして、住民票を移していない学生や単身赴任の世帯があること、住居ではなく事務所等で使用されている住宅があることを考慮すれば、空き家率が6.7%より低い可能性は極めて高く、空き家率も空き家数も実際には問題となるような水準ではない可能性が極めて高い。

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民間調査・自治体調査の空き家率とも違っている

民間でも住宅の入居率は公表されており、例えば日本賃貸住宅管理協会が発表している「日管協短観」の2022年度データでは、会員の管理する賃貸住宅の入居率は、全体で95.3%、委託管理で94.0%となっており、サブリースでは97.3%と極めて高い水準になっている。

これは、住調(「平成30年住宅・土地統計調査」総務省統計局)の賃貸住宅空き家率22.7%(令和5年住調の賃貸住宅空き家率はまだ発表されていない)よりも大幅に低い。

自治体も住調とは別の独自の空家実態調査を実施しているところが多い。

例えば、空家数が日本一多いことで、将来性がないと指摘されることもある世田谷区(島根県と鳥取県の人口よりも多い約92万人の日本一の人口を抱える市区町村だから空家の絶対数が多いのも当たり前だ)も空家実態調査を行っている。

平成29(2017)年11月に発表されている「世田谷区空家等実態調査報告書【暫定版】」では、空家の可能性が高い建物は966棟と記載されている。

これは平成30年住調(令和5年住調の市区町村別空家数はまだ発表されていない)の世田谷区の空家数5万250戸とは桁違いに少なく、そのほとんどが戸建ての空家だと考えられる住調のその他の住宅の空家数1万2580戸と比べても桁違いに少ない。

世田谷区以外でも、令和5(2023)年3月に発表された「荒川区空き家実態調査報告書」では空き家率は3.2%とされており、平成30年住調の11.8%とは全く数値が違う。

地方でも例えば埼玉県久喜市が2021年3月に発表した「久喜市空家等実態調査報告書」では、空き家数は1779件とされており、平成30年住調のその他空き家3260戸の半数程度、新潟県村上市の「令和4年度村上市空家実態調査」では、空家数は1987軒とこちらも平成30年住調のその他空家数2780戸より3割程度も少ない。