小泉純一郎元首相が巧みに用いた引用術

「引用」という観点からは、会話文以外にも、歴史的格言、名言、故事成語、ことわざ、慣用句、四字熟語なども候補に挙がります。

第三者の視点や意見によって主張の強度を増すことができるのは「会話文」と同様です。

歴史的な偉人の言葉や故事成語など、すでに人類が教訓として大切にしてきた言葉が入ればなおさら、「それと同じくらいの重要性を持って行動を起こそうとしているんだ」という強固な説得力につながります。

この引用の技術をとても巧みに用いているのが、小泉純一郎元首相です。

>過ちを認める。そして「過ちを改むるにはばかることなかれ」って論語にあるじゃないですか。この言葉は論語にあるんですけど今でも通用する。私は考えが変わった。(*1)
>「少年よ、大志を抱け」という言葉があるでしょう。わたしは年寄りになったけれども大志を抱いていいのです。(*2)

*1 2万人を興奮させた!小泉純一郎「絶叫」演説@新宿アルタ2014 02 01〈日仏共同テレビ局France10〉
*2 大下英治『小泉純一郎・進次郎秘録』(イースト・プレス)

首相在任時は原発推進派だった小泉さんは今、当時とは正反対の「原発ゼロ」を強く訴えています。

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その“転向”を説明する方法として、故事成語や偉人の名言を引用するだけでなく、さらに持論を重ねて“上書き”しているのです。

名言を「アップグレード」して主張を鮮明に

「名言や故事成語を引用してその意味を説明する」というだけでも十分に、自分の言いたいことの解説はできます。

そこに、ひとつアップグレードして「彼はこう言ったけど自分はさらにこう思う」まで話す、つまり「派生語をつくる」というのは、非常に秀逸な表現技法です。

名言や故事成語をうまく土台にし、新語をつくることで、あなたの主張をより鮮明に伝えることができます。

>「一石二鳥」という言葉があります。ですが、私は今回のプロジェクトを通して、「一石十鳥」できると考えているのです。

といったように、四字熟語や慣用句に含まれる数字の数を増やすのは、初級者でも試しやすい手法です。