知名度の低い名言は「シンプルに添えるだけ」

一方、引用する言葉が一般的に知名度の低いものであれば、新語をつくろうと活用せず、むしろそのまま用いるほうがいいでしょう。

千葉佳織『話し方の戦略』(プレジデント社)
千葉佳織『話し方の戦略』(プレジデント社)

例えば、ネルソン・マンデラの言葉に「なにごとも、成し遂げるまでは不可能に見える」というものがあります。また、アルベルト・アインシュタインは「成功者になろうとするな。価値ある者になろうとせよ」と言いました。

いずれも人物としては著名ですが、言葉はそれほど知られていないため、そこにひと工夫を加える必要はありません。シンプルに自分の主張に添えるだけでも効果を発揮します。

アップルのCEOであるティム・クックは、マサチューセッツ工科大学の卒業式のスピーチの締めで、このように言いました。

>次のことをいつも思い出してください。これ以上に強力な考えはありません。キング牧師の言葉を借りると、「すべての人の人生は関わり合っていて、運命という一枚の衣にくるまっている」のです。皆さんが常にこの考えを念頭に置き、テクノロジーだけでなくその恩恵を受ける人間のことも考え、一部の人ではなくすべての人のために、最高のものを作り、最高のものを捧げ、最善を尽くすなら、人類は今日、大いに希望を持っていいでしょう。(*3)

*3 【全訳】ティム・クック「MITでの卒業スピーチ」|人生の目的を見つける方法は「人のために尽くすこと」〈クーリエ・ジャポン〉 /

キング牧師といえば「I have a dream. (私には夢がある)」が有名ですが、別の言葉を引っ張ってきたうえで、自分の言いたいことをうまく主張しています。

この手法は、聞き手にとってはその言葉を知ることができるのも価値になります。

引用元の発言者がどのくらい知られているのか。どれだけ“名言”として知られているのか。「相手ありき」で検討してみてください。

名言の引用は「ひとつの話につきひとつ」

なお、大前提として、引用する言葉はひとつの話につきひとつをおすすめします。

名言をいくつも引用する人がときどきいますが、あまり多すぎるとなんの主張にその引用をかけているのか、聞き手が忘れてしまいます。

聞き手が覚えやすく自然と入ってくる程度、基本的には1回にひとつの引用にするようにしましょう。

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