分散投資の方法は歴史的に進化してきた

分散投資には、絶対的な正解があるわけではありません。最適な分散投資の方法は、時代とともに変わっていきます。

たとえば、1980年代のアメリカでは、分散投資は単純な方法で行われていました(図表3)。アメリカの株式に6割、アメリカの政府が発行する国債に4割、というのが当時の分散投資では標準的でした。アメリカ国内だけで分散していたのです。

【図表3】柴山和久『新しいNISA投資の思考法』より

しかし、1980年代は、日本や当時の西ドイツなどが大きく経済成長しています。すると、1980年代の後半から1990年代にかけて、アメリカ株だけではなく、ほかの先進国にも投資をしましょう、という流れが起こるようになりました(図表4)。

【図表4】柴山和久『新しいNISA投資の思考法』より

アメリカにおいても、国際分散投資が始まったのはこの頃です。実は、比較的歴史が浅いといえるのです。

2000年以降の「カネ余り」が国際分散投資を発展させた

1999年にEUが共通通貨のユーロを導入し、2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟すると、今度は東ヨーロッパや中国、インドといった新興国への投資が盛んになりました。また、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に投資することがブームになった時期もありました(図表5)。

【図表5】柴山和久『新しいNISA投資の思考法』より

いまでは忘れている方も多いかもしれませんが、2000年代の10年間、アメリカ株の運用成績はあまりよくありませんでした。当時は、アメリカ以外の国の株式に投資をしたほうが高いリターンが得られたのです。こうした背景もあって、アメリカ以外への投資に関心が向いていきました。

その後、今度は債券への投資も分散させていこうという動きが広がっていきました。ABS(Asset Backed Securities:資産担保証券)という、住宅ローンやクレジットローンを裏付けとした債券や、新興国の発行した債券への投資が進んだのです(図表6)。

【図表6】柴山和久『新しいNISA投資の思考法』より

背景には、2000年代以降の「カネ余り現象」があります。お金が余って低金利が続いていたので、アメリカ国債だけではなく、金利がより高い債券にも投資をしようという風潮になりました。それが行きすぎた結果、のちにリーマン・ショックを引き起こすことになってしまいます。