和食と牛乳が合わないのはわかっている
子どもたちの好みに合わせると、パンやパスタやラーメンなどの洋食や中華を多用したくなりますが、この基準があるため、和食を中心に提供する必要がある、というわけです。言わずもがなですが、和食はごはんを中心にした構成です。
主食、主菜、副菜、汁物の配置で、旬の食材を楽しむことを大切にし、かつおぶしや昆布から出汁を取り、旨味を出します。豊富な発酵食品や乾物を使用し、時には行事食も取り入れます。給食で美味しい和食を提供することを、国も地方自治体も重要であると捉えているのです。
また、引用箇所にあるように、カルシウム不足を解消するために牛乳を活用することが求められています。
「牛乳は和食に合わない」「給食ではなぜ牛乳を毎日出すのか」、そんなことがよく話題にのぼります。
私たち栄養士も、和食と牛乳が合わないのはわかっています。しかし「学校給食摂取基準」のカルシウム値、「学校給食の標準食品構成表」で規定される牛乳の必要量、どちらも飲用牛乳がなくては達成できないのです。
給食のない日のカルシウム摂取量が、推定平均必要量以下を示す小学生は60~70%、中学生では70%以上も存在するという調査結果*1もあります。
*1――「学校給食摂取基準の策定について(報告)」学校給食における児童生徒の食事摂取基準策定に関する調査研究協力者会議(平成23年3月)
牛乳の代わりは小松菜1束
戦後の学校給食のスタンダードとなった「完全給食」は、主食・おかず・ミルクで構成されると第3章でご紹介しました。
学校給食法の施行時に作られた「学校給食法施行規則」にも、「完全給食」の内容はこのように定義されています。
昭和29(1954)年の学校給食法施行段階で、そもそもミルク(当時は脱脂粉乳)が含まれているのが完全給食ですから、栄養素や食品摂取量の基準値は、牛乳を飲むことを前提として算出されているのです。
「栄養価を満たすためなら、ほかの食材でカルシウムを摂ればいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし栄養計算をしてみると、たとえば小松菜なら毎日1束ぶんを食べなくては足りません。ちりめんじゃこなら1パックです。
小松菜を一人に1束では予算がパンクしますし、ちりめんじゃこ1パックでは、タンパク質や塩分が一瞬で基準値をオーバーします。そもそもそんなに食べられないでしょう。どうやっても牛乳がなくては成立しない、牛乳ありきの摂取基準になっているのです。