子どもの数が増えるほど、女性の生活満足度は下がる
次の図表2では、子どもの数と既婚女性の生活満足度の関係を見ています。
この図から、「子どもの数が増えるほど、女性の満足度が低下する」という傾向が読み取れます。「二人は欲しい」「できれば三人目も欲しい」と望む女性がいる中、実際に出産してみると生活全般の満足度が下がってしまう。これが日本の女性が直面する厳しい現実です。
ほとんどの親にとって子どもはかわいく、愛おしい存在です。しかし、子どもの数が増えるにしたがって、生活全般の満足度が低下してしまう。このような厳しい現実が「もう一人」を生むことをためらわせ、出生数の減少につながっている可能性があります。
続く図表3は、子どもの年齢別に見た既婚女性の生活満足度の変化を示しています。
この図から、「女性の満足度は、子どもの年齢とともに低下し、子どもが思春期にさしかかると最も低くなる」という傾向が読み取れます。
子どもが思春期になると、親子関係が悪化し、満足度が下がってしまう。しかし、それを過ぎて親子関係が改善していくと、満足度も徐々に持ち直していく。この結果は、すでに成人したお子さんを持つ親御さんにとって、実感に近いものではないでしょうか。
女性の幸福度を下げる2つの可能性
以上の分析結果は、子どもを持つ人にとってドキッとするものではないかと思います。子どもを持つことはポジティブなイメージをともなうことが多いため、分析結果とのギャップに驚いた人も少なくないでしょう。
さて、ここで疑問になってくるのが「なぜ子どもを持つことが女性の幸福度を下げるのか」という点です。何が原因となり、子どもを持つ女性の生活満足度が低くなっているのでしょうか。この背景には、大きく言って二つの可能性が考えられます。
一つ目は、「子どもの存在自体が女性の幸福度を低下させる」という可能性です。
二つ目は、「子どもを持つことにともなうさまざまな変化が、女性の幸福度を低下させる」という可能性です。
これら二つの可能性のうち、前者については、妥当ではないと考えられています。というのも、子どもを持つことが人生における精神的な充足や幸福につながるメリットがあると指摘する研究があるためです(*1)。
子どもとの触れ合いやその成長を見守ることは、自分の人生に大きな意味があると実感することにつながるだけでなく、日々の生活に充実感をもたらします。愛すべき存在が近くにいてくれるということは、それだけで幸せを実感させてくれます。これらの点から、子どもを持つこと自体は、幸福度を高める効果があると言えるでしょう。